【7月3日 AFP】地球温暖化を野放しにすると、世界の海に生息する海洋生物に回復不能な被害が及ぶと警告する国際チームの研究報告が2日、発表された。温暖化により、魚は水温の低い海域を求めて移動を余儀なくされ、貴重なサンゴ礁は壊滅状態に追い込まれるという。

 米科学誌「サイエンス(Science)」に発表された論文は、世界平均気温の上昇幅を産業革命以前の気温から2度未満に抑えることが、地球の海に気候変動による最悪の影響が及ぶことを食い止める唯一の方法だとしている。海は、地球の生命にとっての生息可能領域の9割をもたらしている。

 今回の成果は、国際研究「オーシャンズ2015イニシアチブ(Oceans 2015 Initiative)」による調査に基づくものだ。同チームは、海と海洋生物、およびそれらが毎年もたらす莫大な価値のある物品とサービスに、気候変動がどのような影響を及ぼすかを予測した最新の研究を調査した。

 研究チームは、二酸化炭素(CO2)排出の「現状維持シナリオ」を考察対象とし、2100年までの気温上昇幅を2度未満に抑えるためにCO2排出量を大幅に削減した際に予想される影響とを比較した。これはコペンハーゲン合意(Copenhagen Accord)に沿った削減目標だ。

 将来の海の状態については、今後数十年間に排出される炭素量によって決まると論文は指摘しており、「海洋生態系とそれが提供するサービスに対する(現状維持シナリオによって)予測される重大で事実上回復不可能な影響を回避するには、CO2排出の早急で大幅な削減が不可欠だ」と呼びかけている。

 フランス国立科学研究センター(National Center for Scientific ResearchCNSR)のジャン・ピエール・ガットゥーゾ(Jean-Pierre Gattuso)氏が主導した論文では、何らかの対策が施されなければ「魚が現在の生息域から65%速いペースで移動、結果として生物多様性と生態系機能に変化が生じる」と推測された。

 海は時間とともに、化石燃料の燃焼で排出される炭素を吸収する能力が弱くなる。そして、炭素ガスによる大気汚染は、酸性度の上昇を招き、海洋生物に害を及ぼす。海面上昇、海水中の酸素量の低下、病気なども、汚染に関連する脅威の上位に挙げられている。

 特定の種類のサンゴについては、海水温度の上昇に適応できる可能性があると最近の研究で示唆されている。しかし、このことについて論文では、「大半の排出シナリオ、特に気温が時間とともに上昇するシナリオの下では、サンゴがその個体数を維持して、十分なペースで適応できるかは疑問」と指摘された。

 今回の成果は、今秋に仏パリ(Paris)で開催される気候変動国際会議への情報提供に役立つはずだと研究チームはコメントしている。(c)AFP/Kerry SHERIDAN