【7月2日 AFP】欧州宇宙機関(ESA)の国際研究チームは1日、67P/チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星(Comet 67P/Churyumov-Gerasimenko)に、地球の陥没穴と同じ過程で形成されたと考えられる円柱状の深い穴が点在していることを発表した。

 英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された論文の共同執筆者、米メリーランド大学(University of Maryland)のデニス・ボドウィッツ(Dennis Bodewits)氏は「これらの奇妙な円形の穴は、直径と同じくらいの深さだ。彗星周回探査機ロゼッタ(Rosetta)は穴をのぞき込むことができる」と話す。

 これらの穴は、地球上で陥没穴ができる過程に非常に良く似た表面の崩壊プロセスによってできたと考えられるという。地球の陥没穴は、地下浸食によって空洞ができ、天井部分がそれ自体の重みで最終的に崩れ落ちることで形成される。

 ボドウィッツ氏は声明で「このプロセスが働く仕組みを理解する上で助けになる情報のデータベースがすでに作成されている。このデータベースにより、彗星表面下の調査をこれらの穴を通じて行うことが可能になる」と述べた。

 ロゼッタ搭載の撮像システム「オシリス(OSIRIS)」で撮影された画像からは、67Pの典型的な陥没穴が、直径約200メートル、深さ約180メートルであることが分かった。論文によると、ロゼッタは67Pの北半球で陥没穴を18個発見したという。研究チームによると、深い穴にはガスと塵(ちり)の噴流が見られるが、浅い穴には噴流はそれがないという。

 観測によって、穴が何らかの「爆発現象」で発生した可能性が排除されたことで、陥没説の妥当性がさらに高まったと研究チームは指摘している。

 論文では、「彗星の表面下にある熱源により(主に水、一酸化炭素、二酸化炭素でできた)氷が昇華(固体から気体に状態が変化)している」と仮説を立て、また「氷の塊が昇華で消失することによって形成される空洞が大きくなると、最終的に天井部分が自重で崩れ落ち、67Pの表面にみられるような側面が切り立った深い円形穴が生じる」としている。

 さらに、穴が深いほど「新しい」ものであることが考えられる。研究チームは、時間が経つにつれて、壁部分が徐々に崩落して生じた塵と氷塊が穴にたまり、67Pの表面にある浅い穴が形成されるとその理由について説明した。

 67P彗星は、寒くて暗い宇宙空間で数十億年にわたる孤独な旅を続けてきたが、最近では、探査機ロゼッタの「催促」に応じて秘密の数々を打ち明けている。

 探査機が彗星に接近し、より詳細に観測できるようになると、それはゴム製のアヒルの玩具に似た奇妙な形で岩山や砂漠のような地形があることが分かった。また、非常に暗く、その表面には炭素が豊富で、極めてひどい臭いを放っていることなども判明している。(c)AFP/Mariette LE ROUX