【7月1日 AFP】先月26日に起きたチュニジアのリゾート襲撃事件で、射殺された実行犯のセイフッディン・レズギ(Seifeddine Rezgui)容疑者(23)について、家族や地元の知人は、アルバイトで大学院の学費を稼ぎ、ブレークダンスが好きな普通の若者だったと語っている。

 6月26日にチュニジア北部スース(Sousse)郊外のビーチリゾートで38人が殺害されたこの事件の実行犯がレズギ容疑者と判明したことで、容疑者の出身地である北西部の小さな町ガーフール(Gaafour)はショックに包まれている。

 家族や地元の友人はレズギ容疑者について、法律を守る若者で、狂信的なイスラム過激派からは遠くかけ離れた印象だったと説明した。

 容疑者のいとこ、ニザルさん(32)はAFPの取材に対し、事件の前日、ガーフールでレズギ容疑者を見かけたと話した。チュニジア中部の大学で修士課程に通っていたレズギ容疑者は、学費を稼ぐため、地元に戻ってきてはウエイターのアルバイトをしていたという。ニザルさんは「彼は普通だった。ここに戻ってきて、喫茶店で働いて、家に帰る。祈りに行ったり、喫茶店で友達と過ごしたり。ガーフールの人は皆、驚いている」と語った。

 チュニジア当局は、レズギ容疑者には攻撃を企てるような兆候が一切なかったため、監視対象にも入っていなかったことを認めた。内務省報道官は現地テレビ局に「我々はレズギ容疑者のことを把握していなかった。彼の家庭環境には問題はなかった」と語った。

 ガーフールの貧困地区にあるレズギ容疑者のつつましい実家では、訪れた人々が精神的に打ちのめされた父親に哀悼の意を述べていた。記者たちが近づくと、父親は疲れ切った様子で「頼むから話しかけないでくれ」と取材を拒んだ。

 この事件ではイスラム過激派組織「イスラム国(Islamic StateIS)」が犯行声明を出し、レズギ容疑者を「カリフ制国家の戦士」と呼んだが、レズギ容疑者を知る人の多くは、そのようには全く思えないと戸惑いを隠せない様子だ。

 青少年センターのダンスクラブでレズギ容疑者と出会ったというガーフール出身の青年はAFPに「彼は本当にいいブレークダンサーだった」と語った。

 チュニジア内務省によると、レズギ容疑者はテロを準備する過程で自分を孤立させていったという。前出の報道官は「彼はインターネットに没頭し、友人にも、どのような情報を得ているのか教えようとはしなかった。ネットに熱中する過程で自分を孤立させていったのだろう」と語った。

 ラフィク・シェリー(Rafik Chelli)内務次官は30日、レズギ容疑者がリビアへ不法渡航し、イスラム過激派から武器を扱う訓練を受けていたと発表した。(c)AFP/Maher Hamassi