【7月1日 AFP】精子のダート(手投げの矢)から交尾後の共食いまで、動物の性交にまつわる奇妙な行動で科学者が驚くことはもはや少ない。だが、生物学者らはこのたび、科学的言及に値する、あまりにも奇妙な行動を目撃した──それは、針のような生殖器を自らの頭部に突き刺して子孫を残す方法だ。

 この奇妙な生殖行動が見られたのは、マクロストマム・ヒストリクスと呼ばれる極小の水生扁形動物。英学術専門誌「英国王立協会紀要(Proceedings of the Royal Society B)」に研究が掲載された。

 研究チームは、交尾相手が少ない条件下で子孫を残すために、自己受胎という方法を進化させた可能性があると理論付けている。

 この生物は体長約1ミリの透明な体を持ち、オスとメスの生殖器官がある両性動物だ。通常は「スタイレット」と呼ばれる針のような突起部を使い、相手の外体膜を突き刺して精子を送り込む。 だが、交尾相手が不足している場合に限り、尾部にあるこのスタイレットを自分自身に突き刺すという。

 研究を行ったスイス・バーゼル大学(Basel University)と独ビーレフェルト大学(Bielefeld University)の生物学者らは、単体で置かれたものと小集団にされたものとに分けて、それぞれを観察。しばらくした後、研究チームはそれぞれの個体が持つ精子の量を測り、そしてお互いに「著しく異なる配分」があることに気がついた。

 精子の量は、集団に置かれた個体でより多く見られたが、それは主に尾部に存在していた。一方の隔離され個体では、頭部に精子が多く見られたという。

 この結果が示しているのは、交尾相手がいない場合に「自分の頭部などに、あるいは頭部だけに」精子を送り込んでいることだとしている。(c)AFP