■議論終結となるか

 泥土噴出の原因に関するこれまでの研究は、泥火山噴火の2日前に約260キロ離れたジャワ島中部ジョクジャカルタ(Yogyakarta)で発生したマグニチュード6.3の地震とする説と、泥火山の噴出口から150メートルしか離れていないバンジャル・パンジ(Banjar Panji)天然ガス田とする説に二分されていた。

 当時その場所で掘削を行っていたインドネシアの石油・天然ガス採掘会社ラピンド・ブランタス(Lapindo Brantas)は、自社のウェブサイト上で、掘削作業と泥土噴出を関連付ける証拠は調査では何も見つかっていないと主張。「ラピンド・ブランタスの地質学専門家らは、泥土噴出は2日前に発生した地震前後の地震活動に関連していると考えている」として、シドアルジョ県の住民に援助金を約束していることを指摘している。

 29日に同社からのコメントは得られなかった。

 今回の最新研究は、ほぼ2年前に同じくネイチャー・ジオサイエンス誌に発表された、ジャワ島中部地震を泥土噴出の原因とする研究に真っ向から異を唱えるものだ。

 ドイツ・ボン大学(University of Bonn)のスティーブン・ミラー(Stephen Miller)氏が主導したこの研究は、噴出した泥土の発生源となった地下深部の粘土を地震が液化させ、断層に流入させたことを明らかにするために、コンピューターモデルを使用した。

 だが、このようなシナリオは「あり得ない」ことが、最新研究で判明した。

 ティンゲイ氏は「粘土の液状化は必ず大規模な天然ガス放出に付随して起きている。泥流を上昇させ、地表に噴出させるのを助けたとこれまで主張されてきたのは、まさにこの大規模ガス放出なのだ」と指摘する。だが、ティンゲイ氏の研究チームが独自に行った分析は「地震後に天然ガス放出は起きていないこと」を示していた。

 噴出口下部の岩石層の天然ガス含有量に関する研究チームの調査は、バンジャル・パンジ天然ガス井で収集された測定値に基づくものだ。同ガス井では、掘削作業中に天然ガスの濃度と組成が詳細に記録されていた。

「今回の研究により、地震がこの比類のない災害を引き起こしたかどうかをめぐる議論に終止符が打たれることを期待している」とティンゲイ氏は付け加えた。(c)AFP