【6月29日 AFP】(一部更新、写真追加)その男はただの観光客に見えた――銃を手に殺りくを始めるまでは。チュニジア北部のリゾート、ポートエルカンタウィ(Port el Kantaoui)のビーチで外国人観光客ら38人が犠牲になった銃撃事件で、男が笑みを浮かべながら銃を撃っていたことが28日、目撃者の証言で明らかになった。

 現場となった五つ星ホテル「リウ・インペリアル・マルハバ(Hotel Riu Imperial Marhaba)」のビーチに自宅が隣接しているアミル・ベン・ハジ・ハシン(Amir Ben Hadj Hassine)さん(22)は、事件が起きた26日について、最初の発砲音が聞こえてからセイフッディン・レズギ(Seifeddine Rezgui)容疑者が射殺されるまで「40~45分くらい銃声が続いた」とAFPに語った。ビーチに横たわった大勢の遺体の光景が忘れられないという。

 ハシンさんのいとこで事件当時ビーチにいたマレク(Malek)さん(16)は、レズギ容疑者が犯行に及ぶ瞬間を見ていた。

「男が手にしたビーチパラソルを砂に下ろし、しゃがみ込んだ。パラソルを立てようとするごく普通の動作に見えた。ところが次の瞬間、彼はカラシニコフ(Kalashnikov、自動小銃)を掴み、砂に向かって撃ち始めた」。周囲にいた人たちは皆、何が起きたのかと立ち上がったという。そこで目にしたのは、満面の笑みで観光客たちを撃つレズギ容疑者の姿だった。「みんな必死で逃げた」

 一方、セイフ(Seif)さん(21)は「信じがたい光景だった」と自分の体験を明かした。「男は落ち着きはらっていた。まるで、ダンスをするか音楽を聴いているみたいな様子で歩いていた」。レズギ容疑者はセイフさんたちのすぐ近くまで来たが、セイフさんたちを撃とうとはせず「あっちへ行け。お前らに用はない」と言ったという。

 複数の目撃者が、レズギ容疑者はビーチで外国人観光客を狙って撃っていたと語る。ただ、チュニジア保健省によれば、負傷者には7人のチュニジア人も含まれている。

 レズギ容疑者はビーチでの銃撃後、ホテルへ向かった。「すっかり落ち着いた様子でホテルへ入っていった」と、ハシンさんは回想する。

 アミルさんは、現場のビーチ周辺には警察の検問所が多く配置され、定期的な巡回が行われていたにもかかわらず、事件当時に警察官が見当たらなかったことがショックだったと話した。「警察が間に合わなかったことは、問題だ」

 同事件に関してはイスラム過激派組織「イスラム国(Islamic StateIS)」が犯行声明を発表。実行犯について、「カリフ制国家の兵士」であり、ISの敵や「姦淫、悪行、背教の巣窟(そうくつ)」を標的としたと主張している。(c)AFP