【6月24日 AFP】数十人の従業員がコンピューター画面を凝視しながらキーボードをカタカタと打ち、世界中の顧客のためにプログラム作成やデータ入力をしている。どこにでもあるソフトウェア会社のようだが、この企業は2006年からイスラエルによって封鎖されているパレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)にあり、プログラマーは皆、パレスチナ人だ。

 ガザを拠点とするアウトソーシング企業、ユニット・ワン(Unit One)の共同創業者、サーディ・ルズン(Saadi Luzun)さん(33)は「私たちはここで、封鎖を破っている。ガザ地区に生きる者も大きな事を成し遂げることができるんだということを示している」と話した。ユニット・ワンは湾岸諸国や欧州の顧客向けに、ウェブやモバイル・アプリケーションの開発も行っている。

 ルズンさんは10年前、ソフトウェア開発者のアハメド・アブ・シャーバン(Ahmed Abu Shaaban)さんと手を組み、ガザ市の小さな部屋で小規模の事業を立ち上げた。現在では89人の従業員を抱える企業にまで成長させた。

 ルズンさんは「ガザには石油もガスもないが人材は豊富だ。機会を待っている若者がたくさんいる」と語った。従業員の大半は若い女性。女性の採用は社会的責任と考えるルズンさんの次の目標は障害者の採用だという。

 2014年のイスラエルとの50日間にわたる戦闘でガザの大部分が壊滅し、約2200人のパレスチナ人が死亡し、1万人以上が負傷した。

 ルズンさんは「ガザは戦争や流血、爆弾だけではない。ガザの人々はビジネスをしたがっている。人道支援をただ待っているわけではない」と話す。採用活動を行ったところ、10人の採用枠に400人の応募者が殺到したという。

 プログラマーのモハメド・バンナー(Mohammed al-Banna)さん(27)は、テクノロジー分野で働くと自由を感じることができると語った。テクノロジーはイスラエルがガザを外界から切り離すことができない「唯一の分野」だからだという。

 実際は、イスラエルはガザ地区の通信網とインターネット回線を管理しており、ガザと世界の他の地域をつないでいるデジタル通信網を完全に切断してしまうことも技術的には可能だ。

 ユニット・ワンはこれまで大きな成長を遂げてきた。ルズンさんは米グーグル(Google)のような社風を作り上げるという夢を抱いている。「グーグルのようなことをしたい。従業員が楽しめるイベントの企画も考えている」と語った。

 しかし、ガザ地区の不安定な情勢は当面変わりそうになく、ルズンさんの夢の実現は容易なことではない。(c)AFP/Sarah Benhaida