【6月19日 AFP】水田で栽培される稲などの、水面下に根を張る植物を利用して発電する画期的なシステムを、オランダの科学者チームが開発した。このシステムが、世界各地の孤立した村などで安定した電力供給源となる日が来るかもしれない。

 生きた植物からエネルギーを「収穫」するシステムを開発したプラント・イー(Plant-e)の共同創立者、マロリン・ヘルデル(Marjolein Helder)氏は「これは、植物が必要量を上回るエネルギーを生成するという原理に基づいている」と話す。

「このシステムが太陽光発電や風力発電より優れている点は、夜間や風がない時でも稼働することだ」とヘルデル氏は、AFPの取材に語った。

 このシステムで電気を生み出すために必要なのは、水中に根を下ろす植物だけだ。マングローブの低湿地、水田、沼地に生える植物でも、植木鉢や庭などで栽培される植物でもよい。

 このシステムの技術は、植物が光合成で生成する有機物の余りを利用している。余分な有機物は植物の根から放出され、微生物に消費される。

 微生物は有機物を消費する過程で、電子を外部に放出する。この電子を根の近くに炭素電極を設置して「収穫」すれば、電気を発生させることができる。

 植物から電気を取り出す仕組みは以前からあるが「これは植物を傷つける必要のない、非侵襲的なシステムだ」とヘルデル氏は語った。

 水が蒸発したり凍ったりした場合は発電が止まるが、「水を追加するか、氷が解けるのを待てばよいだけだ」と同氏は話した。

 オランダのワーヘニンゲン(Wageningen)に本拠を置くプラント・イーは現在、同社の発電技術を組み込んだ50センチ四方のプラスチック製容器で構成されるシステムを販売している。容器はつなぎ合わせて植物を収容できるようになっている。

 公園や屋上に設置するように設計されているこのシステムの価格は現在のところ、総面積100平方メートル分で6万ユーロ(約840万円)だ。

 だが、湿地で発電を開始するために迅速かつ簡単に水面下に設置可能なチューブ型のものなど、プラント・イーは現在も製品を開発中だ。(c)AFP/Nicolas DELAUNAY