【6月15日 AFP】中国の靴工場の労働者たちが、安い料理店に集まってストライキについて話し合っていると、警官が押し入ってきてリーダー格の何人かを連行した。「彼らはドアを突き破って入ってきて、私たちに動くなと命じた」と、ある女性労働者はAFPに語った。暴力を振るわれたという証言もあり、背中をけがし、大きな包帯を巻いた女性もいた。

 ジーンズからスマートフォンまであらゆるものの工場が立ち並ぶ中国南部・広東(Guangdong)省。伊高級ブランド「コーチ(Coach)」などの靴を製造しているという同省番禺(Panyu)のライド(Lide)工場では、従業員2000人以上が道具を置き、工場の外に派手な色のマットを敷いて泊まり込み、未払いの手当を要求した。

 ストライキを組織した人々は拘束されたが、24時間以内に釈放された。全従業員による先月のこのストライキで工場の生産は滞り、数週間後には労働者たちが勝利を手にした。

「世界の工場」と呼ばれる中国の労働者たちはかつて低賃金でもおとなしく働いていたが、最近では賃上げや環境改善を求めて立ち上がることが増えている一例だ。

■抗議行動、過去3年で3倍に

 低賃金労働者は中国の経済成長を長く支えてきた要だが、最近の新しい運動の動きは当局を不安がらせている。

 楼継偉(Lou Jiwei)財政相は先月、労働力にけん引される経済から、もっと労働集約度が低く付加価値がより高い産業へとシフトできる前に、高賃金によって製造業の利益が出なくなれば、中国は「中所得国の罠」にはまると警鐘を鳴らした。同氏は、労使交渉を促す法律は「恐ろしい」と述べ、米国の自動車業界で破産が相次いだのは行き過ぎた「労組の力」のせいだと非難した。

  香港の労働権利保護団体、中国労工通報(China Labour BulletinCLB)によれば、中国で昨年起きた労働者による抗議行動は1379件。過去3年で3倍以上の増加だ。

 ここ数十年で中国最大のストライキが起きたのも昨年だった。ナイキ(Nike)やアディダス(Adidas)などの靴を製造している裕元工業(Yue Yuen Industrial)の広東省の工場で働く数万人の労働者が決起。逮捕者が出たものの経営側の譲歩を勝ち取った。

 一党独裁の中国共産党は独立した労働運動を恐れており、労組連合は政府系の一連合しか認めていない。この連合は2億9000万人の組合員がいると称しているが、姿勢は経営者寄りである。しかし労働運動家らによれば、生産年齢人口の減少による労働力不足と、最近の法改正で労働者の権利が広がったことで労働者たちは勢いづいている。「労働者たちは自分たちの権利だけではなく、自分たちで運命を決める力と能力をつけつつある労働者階級の一部であることに目覚めている」とCLBは述べている。