スミスさんは1年前からこのプロジェクトに関わっている。IS戦闘員の花嫁となって新しい「カリフ国家」に住むために、多くが欧米での裕福な暮らしを捨てた女性たちによるネット上の投稿をデータベースにするのが、彼女の仕事だ。スミスさんがネット上で追っている女性の1人はまだ14歳。若者たちに同情はするが、彼女たちの思想が過激になってくると、同情も薄れてくるという。「哀れみはさほど感じない。ただ、何が彼女たちを決断させたのか、そのことにとても関心がある」

 ロンドン大学キングスカレッジ(King's College London)の過激化研究国際センター(International Centre for the Study of Radicalisation)と共同で行われているこの研究は、特に英語での投稿アカウントに絞られているため限界はある。最近の米国の研究によれば、ツイッターでIS支持者に関連する4万6000アカウントのうち、4分の3はアラビア語での投稿だ。

 また、ソーシャルメディアで収集する情報は断片的だ。しかし、スミスさんたちが集めた情報によって、純真な「戦闘員の花嫁」というイメージが覆され、男性と同じように思想的に傾倒した女性像が明らかにされている。

■「行間を読む」

 ISでは、戦闘への参加が禁じられている女性たちは、自由にアクセスできるソーシャルメディアを使ってISのプロパガンダを広める。投稿を通じ、ISの下では充実した医療が受けられることや「姉妹」の仲間意識をアピールし、新たな女性たちの勧誘に努める。

 サルトマンさんは「私たちが見ているレンズはプロパガンダであって、現実ではないことは分かっている。私たちは行間を読んでいるのだ」と話した。

 IS戦闘員を称賛する内容の投稿の合間には、流産の経験や家族を祖国に残してきたことに対する辛い心情などもこっそりと書き込まれている。ツイッターのあるハッシュタグからは、夫を亡くした後、孤独感を抱いている女性たちがいることもうかがえる。

 だが、こうした悲観的な内容の投稿は、フォロワーによる前向きな投稿ですぐにかき消されてしまう。また多くのアカウントは仮名を使っている上、ISに関する話題を広めるという規則に違反すると度々、アカウントごと削除されてしまう。

 投稿内容が実際の攻撃に言及している場合、研究員たちはツイッターやフェイスブックに報告している。だが、こうした監視手段は非生産的だとも感じている。スミスさんは「アカウントを一つ削除すると、新たに三つのアカウントが作られる」と語った。(c)AFP/Alice RITCHIE