【6月8日 AFP】(一部更新)オーストリア・ウィーン(Vienna)で8日、実際の足の感覚を再現することが可能な世界初の義足が公開された。さらに、なくなったはずの足に痛みを感じる「幻肢痛」を消す効果もあるという。

 開発したのは、同国北部にあるリンツ大学(University of Linz)のフーベルト・エガー(Hubert Egger)教授。この新技術は、2段階のプロセスからなる。

 まず、外科手術により、患者の脚の断端に残る神経の末端を大腿部の健康な組織につなげ、皮膚に近い位置に埋め込む。次に、軽量化された義足の底部に取りつけられた6つのセンサーが、断端と接する義足の「柄」内部の「刺激装置」に接続される。現時点での費用は、1万~3万ユーロ(約140万~420万円)ほどだ。

 この義足を試用したオーストリア人の元教師ボルフガング・ランガー(Wolfgang Rangger)さん(54)は、義足公開に先立ちAFPが行った取材に対し、「第二の人生が始まったようだ。生まれ変わったみたいだ」と語った。

 脳梗塞による血栓が原因で2007年に右脚を切断したランガーさんは、ここ半年の間、この新型の義足の試験に参加していた。

「足を取り戻したような感覚だ。もう氷の上で滑ってしまうこともないし、歩いているのは砂利の上か、それともコンクリート、芝生、砂の上なのか判別できる。小石でさえ感じ取ることができる」

 この義足はさらに、ランガーさんを何年も悩ませてきた幻肢痛を消し去るという、驚くべき機能も備えていた。

「以前は、従来型の義足を使って辛うじて歩行が可能な状態で、1夜のうちに2時間以上眠れることはなく、痛みを我慢するためにモルヒネが必要だった」というランガーさん。ところが昨年10月に行った手術の後、数日以内にこの痛みは消え去った。

 エガー教授によると、幻肢痛は、失われた手足に関する情報を得ようとした脳が、感覚を研ぎ澄ますことで発生する。だが、足の感覚を再現する新型の義足を使うことで、脳に本物の情報を再び受け取らせ、必死に情報を求めることをやめさせることができる。(c)AFP/Nina LAMPARSKI