【5月29日 AFP】HIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染診断後の早期に抗レトロウイルス治療を開始することで、AIDS(エイズ、後天性免疫不全症候群)や他の重症疾患の発症率を著しく低下させるとする調査結果が27日、発表された。発表内容は、世界的な規模で行われた調査に基づいている。

 予備データを分析したところ、診断が下された時点で治療を開始した患者グループは、時間が経過し、免疫系が低下した状態で治療を開始した対照グループに比べて、死亡率やAIDSなどの重病発症率が53%低くなることが判明した。結果は予定を1年前倒しして発表された。

 このデータについて研究チームは、抗レトロウイルス薬が、性交渉パートナーへの感染予防にも一定の成果があることを示した過去の研究結果と併せて、早期治療がHIV感染と診断されたすべての患者にとって有益であることを確認するものと説明している。

 米国立アレルギー感染症研究所(National Institute of Allergy and Infectious DiseasesNIAID)のアンソニー・ファウチ(Anthony Fauci)所長は「抗レトロウイルス療法を早期に開始することで、感染患者が得られる健康上の恩恵は著しく大きくなる。今回、その明確な証拠が得られた」と語る。

 同署長はまた、「早期治療は二重の恩恵をもたらす。患者個人の健康状態を改善すると同時に、患者のウイルス量を低下させることで、周囲への感染リスクも軽減できる」と声明で述べている。

 今回の臨床試験は2011年、35か国の年齢18歳以上の男女4684人のHIV感染患者を対象に開始された。

 最新の統計によると、世界のHIV感染患者は約3500万人に上っており、このうち治療を受けている患者は1300万人にすぎないという。

 米疾病対策センター(Centers for Disease Control and PreventionCDC)は、HIV感染の診断後に抗レトロウイルス治療を開始するよう勧告している。(c)AFP