【5月27日 AFP】米ベンチャー企業フレイト・ファームズ(Freight Farms)は使われなくなった海上コンテナを利用した作物の栽培ビジネスを手掛けるフード・テクノロジー企業だ。
天候や土壌の質に左右されない栽培環境を生かし、地元産作物への需要にも対応する。

 米ボストン(Boston)に本拠を置くフレイト・ファームズはジョン・フリードマン(Jon Friedman)氏とブラッド・マクナマラ(Brad McNamara)氏によって2010年に設立された。水耕栽培のための設備を備えた中古コンテナによる新たな農業の形を提案する。

 コンテナは空き地や駐車場など、一般的には農業を行うのは不可能とされる場所でも設置できる。同社は米ラスベガス(Las Vegas)で行われた技術系カンファレンス「コリジョン(Collision)」にも参加し、コンテナの中でバジルのスプラウト(新芽)を栽培する技術を披露した。

 コンテナを利用した栽培システムの概要はこうだ。温度や二酸化炭素濃度、空気、肥料といった栽培環境を制御する機器をコンテナに設置する。栽培用トレイに種子をまいて発芽させ、青い人工光を当てる。さらにそれを人工土壌に移し、根を張らせる。

 コンテナの天井部分から吊るされたライトは生育に必要な日光の役割をする。必要な養分は、人工土壌を通じて与えられる水の中に含まれる。コンテナ1個当たりの収穫量は伝統的な農地、約0.7ヘクタール分に相当。栽培過程で使用する水の量は約90%も節約できるという。コンテナの内部を監視し、遠方から栽培環境を制御するアプリまである。

 コンテナ1個当たりの年間消費電力量は約3万キロワット時。これは、米国の2世帯分の消費電力量とほぼ同じだ。フレイト・ファーマーズによると、商品の長距離輸送のための資源の利用が減ることや作物の腐敗が少なくなることなどで、栽培に必要なエネルギー使用量がある程度、相殺されるという。

 太陽光発電システムの利用については、必要な数だけの太陽電池をコンテナ上部に取り付けることができないため、今のところ選択肢にはないという。

 コンテナで栽培された作物はその種類にもよるが、6~8週間で収穫可能となり、地元産、高品質といった点を評価するレストランなどが高めの価格で買い取る。コンテナによる栽培は気候や天候、土壌の質に左右されないことから、都市部の農家が、レストランや市場の需要を把握しながら、栽培する作物を選択できることも大きなメリットだ。

 フレイト・ファームズのコンテナ栽培システムの価格は7万6000ドル(約935万円)からで、これまでに北米で36個ほどが売れたという。(c)AFP/Glenn CHAPMAN