【5月25日 AFP】新疆ウイグル自治区(Xinjiang Uighur Autonomous Region)南部ホータン(Hotan)のホテルに受付係として就職したばかりの20代の漢民族女性、ファン・リーファ(Fang Lihua)さんは、イスラム教徒が多数派を占める自治区の人口動態を左右する「最前線の歩兵」だ。中国政府は今、同自治区への漢民族移住を積極的に奨励している。

 中国最西端にある資源豊かな新疆ウイグル自治区には、1000万人を超えるウイグル人が暮らす。イスラム教を信仰するトルコ系少数民族のウイグル人は、文化的には、漢民族が多数を占める中国よりも中央アジア諸国とつながりが深い。自治区内では近年、散発的な暴力事件が激しさを増しており、自治区外にも拡大しつつある。中国当局は一連の事件について、中国からの分離独立を主張するイスラム過激派の犯行だと非難している。

 新疆ウイグル自治区では、相次ぐ漢民族の大量流入により、1949年に6%だった漢民族の比率が、11年には38%にまで増加した。そして中国政府は現在、国内で最も進歩的な戸籍制度の導入によって、新たな漢民族流入の波を引き起こそうとしている。

 ファンさんも、半年前に中国政府が発表したこの戸籍制度改革を使用した一人。建築作業員の夫とともに古都・西安(Xian)から電車で3時間揺られ、タクラマカン(Taklamakan)砂漠に接するオアシス都市ホータンに移住してきた。

■戸籍制度改革の裏の意図

 中国では、都市部への移住が厳格に制限されている。農村と都市の戸籍は区別され、都市戸籍を取得しなければ教育や医療、社会保障などの公共サービスが得られないが、移住者が都市戸籍を取得するのは難しく、数年を要する。大都市になると、上級学位や専門技術を有していることや、国営企業か当局にコネがある企業の社員であることなどが戸籍取得の条件とされている。

 だが、戸籍制度改革により、新疆ウイグル自治区南部では教育や技能が戸籍取得の要件でなくなった。

 戸籍制度改革そのものは中国全土が対象で、中国経済のさらなる発展のカギとなる新型都市計画の一環として推進されているものだ。しかし、その改革の中でも最も自由化された制度がウイグル人の多い新疆ウイグル自治区を選んで導入されたという事実は、特筆すべき点だ。

「この戸籍制度改革の実態は、自治区南部への漢民族移住を奨励するものだ」と、中国の少数民族問題に詳しい豪ラトローブ大学(La Trobe University)のジェームズ・リーボールド(James Leibold)氏は指摘する。「その裏には、民族融合を推し進め、願わくは漢民族をもっと流入させることで、自治区南部の質と文明を向上させたいという意図がある」

 戸籍制度改革と同時に、中国政府は少数民族の人口増加に歯止めを掛ける政策も実施している。中国のいわゆる一人っ子政策は少数民族には適用されないが、ホータンでは「産む子どもの数を減らして手っ取り早く金持ちになる」ことがプロパガンダで奨励され、第3子を持たないと決めた夫婦には3000元(約5万9000円)が支給される。