2005年に英国に戻ると木を植える機会に恵まれた。植樹した後は放っておけばよい、というわけではもちろんない。ギャビンさんと木々の間には濃密なギブ・アンド・テイクの関係がある。「木々がひとりでに椅子の形に育つということはありません。同時に、木々に彼らが望まないことを強制することもできません。そんなことをしても木が枯れるだけです」とギャビンさんは言う。

「私たちがやっているのは、何もしなくても自然に起きることに極めて繊細なひねりを加える、ということです。最初は木を拷問にかけるかのようにいろいろと手をかけていましたが、うまくいきませんでした」

 当初使っていた除草剤は便益以上に害をもたらしたためオーガニックな手法を取るようになった。木のうどんこ病はミルクで抑制し、毛虫はつまんで取り除いている。土地の手入れをしたり、剪定ばさみを持って木々の間を歩き回ったりするのが日常の作業だ。

「どの時点をとっても、何かをしてあげなければいけない瞬間を迎えている枝があるんです。それを見つけなければいけない」とギャビンさん。「100本の木があれば残したい枝や若芽が1000あり、残したくないものが1万あります。ただし、どの枝や若芽を残すべきなのか、あるいは取り除くべきなのか、必ずしもすぐに分かるとは限りません」

 木を植えてから約10年が過ぎたが、成果が得られるのはあと2年ほど先だ。最初の椅子の「収穫」は2016年末。仕上げを施され、販売されるのはその翌年になる。

 椅子は2500ポンド(約47万円)、ランプシェードは900ポンド(約17万円)から、六角形の鏡は450ポンド(約8万5000円)で販売予定だ。先行販売分の大半はフランスと米国向けだが、ロンドン(London)、香港(Hong Kong)、ドイツ、スペインなどからも注文が入っているという。(c)AFP/Oli SCARFF with Robin MILLARD in London