【5月26日 AFP】英イングランド(England)中部ダービーシャー(Derbyshire)州ワークスワース(Wirksworth)近郊では一風変わった光景を見ることができる。上下逆さまの椅子の形に成長している木々だ。ここでは特製の枠組みに木をはわせ、さまざまな家具を作る計画が進められている。

 約150脚の肘掛け椅子、100個のランプシェード、鏡の枠などの品が「栽培」されている。家具デザイン界における極めて異例の試みだ。

 発案者の英国人アーティスト、ギャビン・ムンロー(Gavin Munro)さん(40)の会社「フルグロウン(Full Grown)」はいくつかの試作品を製作した。どれも中まで木でできた継ぎ目のない品々だ。

 ギャビンさんは剪定(せんてい)や接ぎ木を行うことで、何年もかけて木を家具の形に育てていく。木が椅子の形になるにはヤナギで4~5年、オークだと9年かかることもある。ギャビンさんはトネリコ、ハシバミ、野生リンゴ、カエデ科のシカモアなどでも家具作りに取り組んでいる。

 ギャビンさんの取り組みには子どもの頃の体験が生かされている。母親が育てていた盆栽はまるで玉座のような形をしていた。ギャビンさん自身は幼い頃、折れてしまった背骨を病院で継ぎ合わせたことがあった。「それで継ぎ合わせることで何かを作ることを考えるようになったんです」

 ギャビンさんはイングランド北部リーズ(Leeds)の家具デザインの学校を卒業し、米カリフォルニア(California)州で流木を使って作品を作るようになった。「大きな塊を継ぎ合わせているときにひらめいたんです。直接作りたいものの形に育てたらいいじゃないか、その方が無駄がないな、と」とギャビンさんは語る。