■「クッカバラ」が懐かしくなった──新たな幕開け

 シャドミさんとクレイマーさんはその後、ニューヨーク(New York)で共に暮らした。しかし、シャドミさんが脳卒中で倒れたことをきっかけに、クレイマーさんはダンスをやめ、18年間にわたり看病を続けた。

 シャドミさんの死去後、再びダンスの世界へと戻った。しかし、新たに出会ったパートナーにも先立たれたため、99歳の時に母国オーストラリアへの帰国を決めた。当時の心境については、「クッカバラ(オーストラリアに生息する大型のカワセミ)やゴムの木のにおいが懐かしくなったの。生まれ育った国に帰ろうとするのは自然なこと」と述べている。

 それまで、祖国での知名度はほとんどなかったが、帰国と同時にそのキャリアはさらに花開くことになった。ミュージックビデオへの出演もその一つだ。クレーマーさんにミュージックビデオへの出演を依頼した歌手のサラ・ベルクナー(Sarah Belkner)さん(31)は、「彼女には創造性に対するこだわりがありとても刺激になる」とコメントした。

 また3月には、自ら振り付けを担当した作品「ジ・アーリー・ワンズ(The Early Ones)」を完成させた。100歳の記念に制作したのだという。クラウドファンディングで制作費を募ったところ、2万6000豪ドル(約250万円)を集めることができた。

 自身についてクレイマーさんは、芸術家ではない自分を想像することができないと語る。「他には何もできなかったけど、自分の人生が大変だったとは思っていない。絵も描くし、文章も書く。もしダンスをしていなかったら、きっとイーゼルに向かって絵を描いていたでしょうね」(c)AFP/Madeleine COOREY