【5月15日 AFP】シリアで進撃を続けるイスラム過激派組織「イスラム国(Islamic StateIS)」の戦闘員らが、国連教育科学文化機関(UNESCO、ユネスコ)の世界遺産に登録されているパルミラ(Palmyra)遺跡の目前まで迫っている。ISは隣国イラクですでに世界遺産の破壊行為に及んでいることから、パルミラも破壊される恐れが出ている。

 英NGOのシリア人権監視団(Syrian Observatory for Human Rights)のラミ・アブドル・ラフマン(Rami Abdel Rahman)代表がAFPに語ったところによると、ISは現在、パルミラの遺跡から1キロ付近にまで接近。シリア政府軍は現地に追加部隊を派遣し、周辺地域での空爆を実施している。

 パルミラは複数の文明が交差する交易路上に位置していた古代都市で、1~2世紀に建設された神殿や列柱道路は、ギリシャ・ローマ文明とペルシャ文明の双方の特徴を兼ね備えている。

 パルミラに向けたISの攻勢が始まったのは12日夜で、以降、政府軍の兵士73人と、IS戦闘員65人の計138人が死亡した。シリア人権監視団によると、パルミラ近郊の村落を制圧したISは、「政権側に協力した」として少なくとも26人の民間人を処刑。うち10人は斬首されたという。

 シリア文化財博物館総局のマムーン・アブドルカリム(Maamoun Abdelkarim)総局長は14日、「ISがパルミラに入ればパルミラは破壊され、国際的な大惨事になる」と述べて世界遺産の保護に向けた国際社会の行動を求めた。

 ユネスコのイリナ・ボコバ(Irina Bokova)事務局長は、「(パルミラは)シリアの人々、そして世界にとってかけがえのない財産」であり、「パルミラを救わなければならない」と述べ、シリア軍部隊と過激派勢力の双方に対し、パルミラを破壊しないよう呼び掛けた。(c)AFP/Sammy Ketz