【5月7日 AFP】彼女は狭いベッドに静かに横たわり、感情のない目でこちらをじっと見つめる。胸は不釣り合いなほど豊かで、顧客になるかもしれない男性たちを誘う。

 彼女の名前は「156」。身長からこう名付けられた。シリコーンよりも柔らかなエラストマー(弾力ゴム)で作られた質の高いラブドールだ。手を自由に動かすことができ、頭と性器は取り外し可能。中国・北京(Beijing)の専門店で購入でき、価格は1体2500ドル前後(約30万円)。

 自動車の設計者、劉さん(29)は北京郊外の工業地帯にある薄暗いワンルームマンションに住む。彼の数少ない所有物の1つがラブドールだ。劉さんは平日は故郷を離れて北京で一人暮らしをしながら働き、週末になると河北(Hebei)省に住む妻と小さな子どもの元へ帰る生活をしている。

 結婚して10年以上経ち、浮気はしたくないが、性欲を満たしたいという。「実際のところ、中国で少額を払って女性を見つけるのはとても簡単だ。でも、妻を裏切ることはできない。浮気なんて考えたこともない」と話した。

「膨らませて使う安っぽいビニールみたいなのとセックスするなんてあり得なかった」。そう話す劉さんは1万5800元(約30万円)をしぶしぶ支払い、もっと生身の人間に近い中国製「156」を手に入れた。

 彼女の体のパーツは取り外し可能で、洗浄や交換が簡単だ。だが、事前に時間をかけて調べたにもかかわらず、劉さんは中国製と外国製との微妙な違いを感じ、絶望した。「工業デザイナーとして、本物のようなディテールに欠けているのを無視できなかった。だから数回、使っただけ」だという。