【5月7日 AFP】カナダ議会は6日、情報当局の権限を大幅に拡大・強化し、同国史上初めて国外での情報活動を認めることなどを定めた対テロ法案を可決した。同法案に対しては、人権侵害につながりかねないなどとして、激しい反対の声が上がっていた。

 法案は、昨年10月に起きたカナダ国内で初のテロ事件を受けて提出されていた。事件では、ケベック(Quebec)州で兵士が車ではねられて死亡。さらに首都オタワ(Ottawa)ではその数日後、男が兵士を射殺した後、国会議事堂を襲撃する事件も起きた。

 同法には、テロ行為の推進を違法とするほか、警察当局が逮捕した容疑者を訴追手続きなしに勾留することを容易にする内容が含まれる。また、カナダ安全情報局(Canadian Security Intelligence ServiceCSIS)がテロ計画を積極的に阻止したり、国外で情報活動を行ったりする権限を拡大する。

 カナダ政府は、国内の若者がイスラム過激派組織「イスラム国(Islamic StateIS)」に参加する目的で出国するという流れを断ち切るためにも、こうした新たな措置が必要だと主張している。

■フランスも情報当局の権限強化

 一方、フランスでも5日、国民を対象とした広範な情報収集活動の権限を当局に認める法案が圧倒的多数で可決された。この法案もまた、人権団体などから曖昧で市民の権利を侵害する可能性があるとの批判が上がっていた。

 同法案の準備は以前から進められていたが、今年1月に首都パリ(Paris)で計17人が殺害された過激派による一連の事件を受けて、法案への支持が集まっていた。

 当局は新法に基づき、「テロリスト」との関与が疑われる全ての人のデジタル通信やモバイル通信を裁判所の許可なく傍受し、記録できるようになる他、インターネットプロバイダーや電話会社に対し、データの提出を命じることも可能になる。

 また情報当局は、個人の住宅にカメラや記録装置を設置する権限や、調査対象としたパソコンのキーボード入力をリアルタイムで記録する「キーロガー」と呼ばれる装置を埋め込む権限が認められる。(c)AFP