【5月5日 AFP】大きな注目を集めている体内埋め込み型の人工心臓の移植患者が、手術から8か月後に死亡したと、仏バイオメディカル企業カルマ(Carmat)が5日、明らかにした。死亡したのは、同国で手術を受けた2人目の患者だった。

 匿名を希望したこの69歳の男性患者は昨年、カルマの臨床試験で人工心臓の移植を受けた。当時、男性は既に末期症状を発症していた。人工心臓は、末期心不全患者のための長期的解決策と考えられている。

 カルマによると、男性患者は1日、「循環虚脱」のために病院へと搬送された。男性患者の人工心臓は正しく動作していなかったため、新たな人工心臓が移植されたが、男性は翌日、術後の合併症により死亡した。

 人工心臓は、慢性心疾患の患者に対する一時的な処置として長年利用されてきた。しかしカルマが目標として掲げているのは、移植待機中の何万人もの患者に長期的な解決策を提供することだ。

 カルマが開発した、患者の胸部に埋め込まれる内蔵型の人工心臓ユニットは、合成物質と動物性組織を併せて作られており、本物の人間の心臓の形状と機能を再現することを目指している。血液凝固や患者の免疫システムによる拒絶反応が起きるリスクを減らすため、人工心臓の素材には柔らかい生体適合物質が使われている。電源はベルトで体に装着するリチウム電池を使用する。

 人工心臓の最初の臨床試験では、術後2か月半で患者が死亡し、昨年3月2日に終了している。このたび死亡が明らかになった臨床試験2例目の患者は、約1か月前に仏メディアとのインタビューで、サイクリングに出かけられるようになり「回復」したと話していた。

 カルマによると、欧米では10万人近くが心臓移植を必要としているが、移植に使用可能な心臓の提供数は約4000と少ない。心臓病は世界の死因の第1位だ。

 現在の臨床試験では、患者4人を対象に実施される予定となっている。3人目の患者は先週、同社の人工心臓を移植されたばかりだ。第1相臨床試験は、患者が術後1か月生存すれば成功とみなされる。カルマはその後、患者20人を対象とする第2相臨床試験を実施する見通しだ。(c)AFP