【5月3日 AFP】2日に行われたフロイド・メイウェザー・ジュニア(Floyd Mayweather Jr.、米国)とマニー・パッキャオ(Manny Pacquiao、フィリピン)によるボクシング世界ウエルター級王座統一戦では、フィリピンから数多くのファンが国民的英雄に声援を送り、判定負けに失意のうめき声を漏らした。

 フィリピンでは国民が体育館や映画館、バーなどに集まり、米ラスベガス(Las Vegas)で繰り広げられたパッキャオの12ラウンドの戦いにくぎ付けになった。そして0-3の判定負けに対しては、フィリピン人の多くが不公平だと感じている。

 政府で働く48歳の男性は、AFPに対し、「再戦すべきだ。こんな敗戦をパッキャオが受け入れるはずがない。彼はこれからも戦うし、現在もまだ強い」と語った。

 マニラ(Manila)郊外のマリキナ(Marikina)では、この男性のほかにも、貧しい人を中心とした数千人が町の中心広場に集まり、トラックのコンテナに設置された巨大なスクリーンでパッキャオの戦いを見守った。

 また、南部ミンダナオ(Mindanao)島のサンボアンガ(Zamboanga)では、軍の体育館に兵士とその家族が集まり、判定が発表されると盛大なブーイングがこだました。

 試合を観戦した中佐は、「判定はアンフェアだ。開始当初から、解説者はマニー優勢だと言っていた。みんながっかりしている」とコメントした。近くにいた人たちも同じ意見だった。

 小さい息子とともに観戦したある兵士は、「勝者は間違いなくマニーだった。僕たちは満足していないし、心から落胆している」と話した。

 厳しい貧困、度重なる自然災害、政治家の汚職にあえぐフィリピンで、パッキャオは絶大な求心力を持っている。そのパッキャオの大一番とあって、この日はほとんどの国民が観戦に夢中になり、人口1億人の国は休止状態に入った。

 教育も満足に受けられないような貧しい子どもから、億万長者へのし上がり、前人未到の8階級制覇を成し遂げたパッキャオのサクセスストーリーは、フィリピン人にとって大きな希望であり、誇りでもある。

 フィリピンのベニグノ・アキノ(Benigno Aquino)大統領は試合前、パッキャオは「すべてのフィリピーノの力の源」だと声明を発表していた。

 大統領の報道官は、試合直後にコメントを発表し、この敗戦でパッキャオが築き上げた国内での地位が揺らぐことはないと述べた。

「パッキャオは本物の国民のチャンプ。彼はポイントではなく、敬意のために戦った。世界中の心を勝ち取ったのはパッキャオだ」

(c)AFP/Mynardo MACARAIG