【5月1日 AFP】ネパールの山岳地帯にあるポカラ(Pokhara)の空港で、インド軍の兵士たちが大地震の被災地に届ける食料や毛布、防水布などの援助物資を慌ただしくヘリコプターに積み込んでいる。一方、首都近郊の古都バクタプル(Bhaktapur)では、中国の救助隊員たちが倒壊した寺院や住宅のがれきをかき分けて、行方不明者の捜索を急ぐ。

 4月25日に発生したマグニチュード(M)7.8の大地震では、ネパール政府の対応の遅れに被災者たちが不満を募らせる中、外国の援助隊に称賛が集まっている。とりわけ隣国インドの評価は突出している。首都カトマンズ(Kathmandu)から避難するバスの列に並んでいたネパール人男性(30)は、「食べ物がないのにネパール政府は何もしてくれない」「助けてくれるのはインドの政府だけだ」と不満をもらした。

 貧しいネパールを挟んで、2つの大国・インドと中国はそれぞれの影響力を高めようと、長年にわたって火花を散らしてきた。死者6200人を超える大災害を受け、中国はネパールに300人の救助隊を派遣したほか、1000万ドル(約12億円)の支援を約束したと報じられている。

 一方、インドもナレンドラ・モディ(Narendra Modi)首相が「全てのネパール人の涙を拭う」と約束。空軍兵士だけで950人を派遣し、ネパール各地に400トン超の援助物資を投下した。

 インドのシンクタンク「ゲートウエーハウス(Gateway House)」のアナリスト、ラジリシ・シンガル(Rajrishi Singhal)氏は、救援活動が一段落した後の復興でも、インドと中国が重要な役割を果たすだろうと予測する。

■「中国は救援を利用」、警戒するインド

 中国の洪磊(Hong Lei)外交部報道官は4月30日、ネパール大地震の救援活動で中国の存在感がライバルのインドに負けているのではないかとの見方を一蹴しつつ、今後「災害援助を強化していく」として、復興支援に言及した。

 ネパールのマヘンドラ・バハドゥル・パンデ(Mahendra Bahadur Pandey)外相は28日、インドと中国の救援活動地域を分けているとインド紙に語っている。

 インドのモディ首相は昨年5月に就任して以降、自国の「裏庭」への影響力拡大を明言しているが、中国の経済力にはなかなか対抗できずにいる。中国はこれまでもネパールに多額のインフラ支援を行い、道路や発電所、通信などの整備に貢献してきた。3月には、世界最高峰エベレスト(Mount Everest)にトンネルを造り中国とネパールを結ぶ鉄道の計画を中国メディアが伝えた。

 中国はインドの隣国パキスタンと同盟関係にあり、スリランカやモルディブとも緊密な経済関係を構築しつつある。地域で中国の存在感が高まりつつあることに、インドは警戒感を強めている。

「中国は、ネパール救援を外交政策の道具として利用している」と、ニューデリーにあるジャワハルラル・ネール大学(Jawaharlal Nehru University)のアミターブ・マットゥー(Amitabh Mattoo)教授は断言した。(c)AFP/ Annie BANERJI、Abhaya SRIVASTAVA