【4月25日 AFP】100年前に起きたオスマン帝国軍によるアルメニア人約150万人の虐殺の犠牲者を追悼する式典が24日、アルメニアの首都エレバン(Yerevan)で行われ、フランスやロシアなど約60か国の首脳や外交官らが出席した。しかしエレバンの丘の上で行われた記念式典では、アルメニア人虐殺が現在も外交上の「地雷原」であることが垣間見えた。

 フランスのフランソワ・オランド(Francois Hollande)大統領は、オスマン帝国の後継国家であるトルコに対し、アルメニア人虐殺を「ジェノサイド(集団虐殺)」として認めることを拒否するのをやめるよう呼び掛け、被害者の冥福を祈ると述べた。

 また、ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領は、旧ソ連諸国の一つで現在最も近しい同盟国でもあるアルメニアの側にロシアは立っていると述べ、またロシアがジェノサイド条約(Genocide Convention)の締約国であることにも触れ「大量殺りくを正当化することはできないし、正当化する理由もない」と語った。プーチン大統領のこの発言にトルコは憤怒し、外務省がプーチン氏を非難するに至った。さらにプーチン氏はこの式典の機会を利用してフランスに対し、ウクライナ問題によってこの1年間続いてきた緊張関係の修復を呼び掛け、国際的孤立状態から脱出したがっていることをうかがわせた。

 式典前に各国首脳らは雨の中を歩き、犠牲者の追悼記念碑に献花した。セルジ・サルキシャン(Serzh Sarkisian)アルメニア大統領は各国首脳に「本日、人間の命を尊び、100年前の出来事を忘れぬことを誓っていただいた出席者の皆さまに感謝する」と語った。

 しかし、米国など代表の出席がなかった国も多く、この虐殺がジェノサイドに当たるとの国際的な認定を目指すアルメニアの取り組みに対し、国際世論が一致していないことが改めて露呈した。

 アルメニア人虐殺については、多数の歴史家がジェノサイドの定義に当てはまるとしており、トルコの猛反発にもかかわらず、現在までにフランス、ロシアを含む20か国以上がジェノサイドだと認めている。しかし、米国は今もジェノサイドだとは認定しておらず、バラク・オバマ(Barack Obama)米大統領は今月18日にもジェノサイドという言葉の使用を避け「恐ろしい殺りく」と表現した。

 ドイツでは18日、ヨアヒム・ガウク(Joachim Gauck)大統領が、当時オスマン帝国と同盟していたドイツにも責任が一部あると述べ、アルメニア人虐殺をジェノサイドと認める国々に加わった。しかしその後、外相のフランクワルター・シュタインマイヤー(Frank-Walter Steinmeier)氏が、独ニュース週刊誌シュピーゲル(Der Spiegel)に対し「ジェノサイドという言葉は使わない」と発言し「複雑な過去を一つのレッテルで済ますことはできない」と語った。(c)AFP/ Irakli Metreveli, Mariam Harutunyan