【4月25日 AFP】19日未明に沈没し、少なくとも700人が死亡したとみられている難民船のチュニジア人船長、モハメド・アリ・マレク(Mohammed Ali Malek)容疑者(27)について、伊シチリア(Sicily)島の都市カターニア(Catania)の裁判所は24日、勾留延長を認めた。

 マレク容疑者は19日未明、多数の難民船を乗せていた全長約20メートルの船を操船しており、遭難信号を受けて同船の近くに来た貨物船と衝突して船を沈没させ、多数の死者が出た事故を起こした疑いが持たれている。

 24日は、同じ難民船の船員を務めていたシリア人のマフムード・ビキト(Mahmud Bikhit)容疑者(25)も出廷した。検察側は、ビキト容疑者を不法移民ほう助罪で起訴するよう求めたが、弁護側は、ビキト容疑者は密航組織のメンバーではなく自身も難民であり、船長の手伝いを依頼されただけだと主張する方針とみられる。

 マレク容疑者は、定員をはるかに超えた難民を船に乗せたうえ、操船ミスで船を貨物船と衝突させて沈没させたとして過失致死罪で起訴される可能性が高い。判事は2人の罪状を決めるため、25日も証人の尋問を行う。

 伊検察当局は生存者の証言から、マレク容疑者が多数の乗船者を下層デッキと船倉に違法に閉じ込めていた罪でも同容疑者を起訴しようとしている。マレク容疑者はさらに操船中に酒を飲み、大麻を吸っていた疑いも持たれているという。

 マレクおよびビキト両容疑者は、地中海(Mediterranean Sea)では第2次世界大戦(World War II)以来最悪といわれる今回の海難事故の生存者28人のうちの2人。生存者によると、船には少なくとも750人が乗っていたとみられている。現在までに24人の遺体が収容され、身元確認ができないまま23日にマルタで埋葬された。

 他の生存者は、マリ人12人、エリトリア人4人、バングラデシュ人3人、セネガル人2人、ソマリア人2人、シエラレオネ人、コートジボワール人、ガンビア人が各1人だった。生存者の証言によると、乗船者はイタリアに向かうため1人730~7000ドル(約8万7000~83万円)を支払っていたが、船にすし詰めにされる前から密航組織によって暴力的に扱われており、リビアのトリポリ(Tripoli)で出航を待つ約1か月の間、使用されていない農場の建物に収容されていた際に乱暴を受けて死亡したり、病気や疲労で死亡したりするケースもあった。(c)AFP