【4月19日 AFP】米ホワイトハウスを担当する写真記者には、大統領を撮影できる時や場所について多くの制限がある。大抵の場合、私たちは指定された場所でしか撮影できないし、そこでもほとんど動くことはできず、撮り方も限られてしまう。

 そこで私たちが使う手の1つが、遠隔操作できるカメラだ。高い場所や大統領が演説している壇台の後ろなど、セキュリティー上、私たちが立ち入ってカメラを構えることができない場所にあらかじめカメラを設置しておいて、リモコンでシャッターを切るのだ。

 2月のドイツのアンゲラ・メルケル(Angela Merkel)首相とバラク・オバマ(Barack Obama)大統領の共同会見では、背後からのアングルを撮影するために壇上の後ろに小さな三脚で1台カメラを設置し、私は2人の前方で別のカメラを構えた。こうすることで、同じ瞬間をまったく違う視点から撮影することができた。

遠隔カメラを設置するSaul Loeb。(c)Ken Cedeno

米ワシントンD.C.のホワイトハウスで、ドイツのアンゲラ・メルケル首相と共同記者会見を行うバラク・オバマ大統領(2009年2月9日撮影)。(c)AFP/Saul LOEB

 記者会見のときに大統領の後ろでカメラマンが脚立に乗っているなんておかしいし、そもそもシークレットサービスが許すはずがない。

 リモコンを使った撮影は新しいことではない。スポーツカメラマンは何年も前からリモコンを駆使し、バスケットボールの試合をバックボードの背面からの構図で撮影したり、水泳競技で水中からのイメージを撮影したりしてきた。

 政治報道の世界でもセオリーは一緒だ。通常は見ることができないアングルへ写真を見る人を導く。小さな三脚や特別な設計の固定具を使って、私たちはカメラをほぼどこにでも設置できる。そして離れたところからシャッターを切ることもあるし、特別な状況では、指定した時間に撮影するようタイマーを設定することもできる。

 例えば、2013年のオバマ大統領2期目の就任式の際には、カメラを連邦議会議事堂の屋根に数日前に設置し、大統領が宣誓を行うときにシャッターが作動するよう、タイマーを仕掛けておいた。セキュリティー上の理由で就任式が開始する48時間前から、議会の屋根には上れないようになっていたためだ。

米ワシントンD.C.で行われたバラク・オバマ大統領の2期目の大統領就任宣誓(2013年1月21日撮影)。(c)AFP/Saul LOEB

 ホワイトハウスのような極度に制限された環境では、リモートカメラでさえ、どこへ置くべきか交渉が必要なこともある。カメラマンが希望する場所に対し、ホワイトハウスの職員たちが、美的観点や(テレビにカメラが映り込むなど)単に大統領が通る場所に近すぎるといった理由でダメ出しをすることもある。