【4月9日 AFP】良い息子や娘とは何か?──「親孝行」をテーマにした中国初の博物館によれば、その答えは「ほとんど超人的な献身と犠牲」であるようだ。

 家族の中の年長者を敬うことは何千年にもわたって中国文化の礎となっているが、急速な経済成長によって、その文化が侵食されていると考える人が多い。100万ドル(約1億2000万円)以上を投じて四川(Sichuan)省に建設された「現代親孝行文化博物館(Modern Filial Piety Culture Museum)」は、中国政府が掲げる「価値観を後世に」伝える取り組みの一環だ。入口にはこの言葉をスローガンにした旗がはためいている。

 この博物館には、現代の親孝行の模範を示すパネルや品が展示されている。例えば、警察官のワン・チュンライ氏は長年にわたって、寝たきりの両親に注射をしたり輸血をしたりと看病した。両親が他界した後、ぼろぼろになったベッドや色あせた簡易トイレが博物館に提供され、展示されている。

 青と黄色の童話風の荷車は、旅行がしたいという母親の願いをかなえるために、2人の息子が母を乗せて中国全土を回ったものだ。荷車を引きながら、600以上の都市や町をめぐった息子たちが履きつぶした靴、12足のうちの何足かも一緒に展示されている。博物館のボランティア、ツェン・ヤン氏は「皆、親の夢について考えることなどあまりない。そこにこの展示の意味があります」と語る。

 親孝行は儒教の基本的価値観であり、一風変わったエピソードが何世紀にもわたり伝えられ、人々にさらなる親への献身を促してきた。中国の有名な書物の一つで、600年前の元王朝の時代に書かれた『二十四孝』には、歯のなくなった姑に自分の乳を与える女性や、親が蚊に刺されないようにと、親の橫で自分が裸になって寝る息子の話などが登場する。