■隔絶された居住地

 チベット高原(Tibetan Plateau)との境にあるフムラ(Humla)区の中心地シミコット(Simikot)では、ダリットの人たちが隔絶された居住地で暮らしている。干し草屋根の家屋は、カーストが高いヒンズー教徒や仏教徒の光るトタン屋根の家屋とは明らかに対照的だ。

 フムラ区のバム・バハドゥル・KC(Bam Bahadur KC)副区長はAFPに対し、「ダリットはカーストの底辺にいることから苦難を強いられている。何世紀もの間、他の階級に属する人々との交流を禁止されてきた」と説明した。「これが彼らが孤立を深めた要因なのは言うまでもなく、旧習に固執し、なかなか変化しようとしない」

 当局者によると、ダリットは家計面でも厳しい状況にある。子どもたちは通学をやめて働くことを強く求められ、親たちは農民として生計を立てるのが精いっぱいだ。

 7人きょうだいの長女で18歳のダナ・スナール(Dana Sunar)さんは、クラスで最後に残ったダリットの女子生徒だった。他の生徒らが退学する中、ダナさんは卒業して教師になる夢を持っていたものの、14歳で誘拐され、月収わずか50ドル(約6000円)の18歳の農民と強制結婚させられた。「ずっと泣いていた。目の前の扉が閉じ、自分の夢が破れた気がした」とダナさんは振り返った。

 夫の実家はダナさんに対し、退学して農業と家事に専念するよう圧力をかけた。既に生後6か月の双子の母となったダナさんは、新たな生活が「苦労ばかりの毎日」だと話す。「十分な収入がなく、1日1食のこともある。この子たちをどうやって育てるか見当がつかない」