今回の裁判では、経済的に貧しい被告や収監者に法的代理人を付ける活動をしている非営利組織(NPO)「公正な裁きのイニシアチブ(Equal Justice InitiativeEJI)」から派遣された弁護人が、ヒントン氏を犯罪に結びつける十分な証拠がないと主張。同州ジェファーソン郡(Jefferson County)巡回裁判所のローラ・ペトロ(Laura Petro)判事は全ての罪状についてヒントン氏を無罪とした。

 EJIは、事件が起きた1985年当時29歳だったヒントン氏は、死刑が執行された人も含めてアラバマ州史上、最も長期間にわたって収監された死刑囚の一人だとしている。

 EJIによると、警察はこの事件で証人や指紋などの証拠を見つけていなかった。同じ年に他のレストランでも同様の事件が発生し、マネジャーが撃たれて重傷を負った。

 重傷を負ったマネジャーはヒントン氏による犯行だったと証言。しかしヒントン氏は事件当時、現場から約24キロメートル離れた職場で勤務しており、上司や同僚がアリバイを裏付ける証言をしたにもかかわらず、有罪判決を受けた。

 ヒントン氏の主任弁護人、ブライアン・スティーブンソン(Bryan Stevenson)氏は、不正な有罪判決が出された理由の一部にはヒントン氏が黒人であることもあったと指摘する。「人種、貧困、不適切な法的支援、無実の罪を着せられた人に対する検察側の無関心な態度が相まって、教科書に載るような典型的な不法行為を作り上げた」と話した。

 米NPOの死刑情報センター(Death Penalty Information Center)によると米国で1973年以降に死刑判決を受けた後で無実になったのはヒントン氏が152人目、2015年では2人目だという。(c)AFP