【3月25日 AFP】健康な卵管と卵巣を摘出するというのは困難な決断だが、専門家は、がんの発症率を高める遺伝子変異を持つ米女優のアンジェリーナ・ジョリー(Angelina Jolie)さんのような女性がこの手術を受ければ、発症リスクを「劇的」に低下させることができると話している。

 ジョリーさんは、2年前の両乳房切除に続き、今回の手術を受けた。スウェーデン・カロリンスカ研究所(Karolinska Institutet)のがん専門医、ペル・ハル(Per Hall)氏によると、ジョリーさんと同じBRCA1遺伝子変異を持つ人は、乳がんや卵巣がんの発症リスクが「とてつもなく高い」という。

 AFPの電話取材に対しハル氏は、この遺伝子変異を持つ女性で、既に望む数の子どもを出産した人に対しては、予防のための手術を検討することを「絶対に」勧めると語った。

 BRCA2より危険なBRCA1の保因者は、乳がんになる確率が約80%、卵巣がんになる確率は40~50%とされる。これに対し、非保因者の乳がん発症率は約10%、卵巣がん発症率は約1.5%だ。

 乳房切除に続いて卵管卵巣摘出術を選択したことで、ジョリーさんはがんリスクを「劇的に」低下させたと、ハル氏は指摘。現在の発症リスクはBRCA1を持たない女性と比べても低いという。

 BRCA1またはBRCA2の遺伝子変異は、女性の約0.2%、つまり500人に1人が持っている。この遺伝的欠陥は、がんの要因全体における割合は小さいものの、乳がんの発症が複数ある家系の半分、乳がんと卵巣がんの両方で発症例がある家系の最大90%にみられる。

 国連(UN)の世界保健機関(World Health OrganizationWHO)によると、乳がんは、20~59歳にがんで死亡した世界の女性の中では最も多い種類で、毎年約45万8000人の女性が死亡している。(c)AFP