【3月22日 AFP】旧人類ネアンデルタール人は動物と同然だとする見方は広く根付いているが、これを完全に見直す必要があるかもしれない。現生人類が欧州に出現するよりはるか前の約13万年前、ネアンデルタール人がワシの爪を材料に世界最古の装身具を作っていたことが研究で明らかになったためだ。

 クロアチアの自然史博物館(Natural History Museum)の若き女性学芸員、ダボルカ・ラドブチッチ(Davorka Radovcic)氏はAFPに対し、「オジロワシの爪8個と、一緒に出土した足指1本を見直していた時、足指に切断の痕跡がいくつもあることに気付き、これらの傷痕は人の手で付けられたものだとひらめきました」と語った。同氏が2013年、当時引き継いだばかりだったクロアチア北部クラピナ(Krapina)遺跡の出土品を調べていた時のことだったという。人類学者の同氏は、小さな箱に保管されているワシの爪の一つを慎重に手に取りながら、「その発見が意味するものは何か、すぐに気がつきました」と振り返った。

 クラピナ遺跡はクロアチアの首都ザクレブ(Zagreb)から約50キロメートル北にあり、ネアンデルタール人の化石が世界で最も大量に出土した。1899年には同国の古生物学者ドラグティン・ゴルヤノビッチ・クランベルガー(Dragutin Gorjanovic-Kramberger)によって、約80体の化石人骨がワシ爪と併せて発掘された。ただ、ザクレブ市内にある同博物館に展示されていたワシ爪と足指が象徴的目的で使用されていた装身具だとの見方が確立されるまでには、115年もの年月を要した。

 出土品のコレクションを調べてきた何人もの研究者たちが数十年間も見落としてきた今回の発見について、ラドブチッチ氏は「わたしの視点が新しかったというだけのことです」と謙遜した。

 国際研究は既に始まっており、論文は今月、公共科学図書館(Public Library of SciencePLOS)の査読付きオンライン学術誌に掲載された。ラドブチッチ氏は、博物館の同僚であるクロアチア人研究者2人と、米カンザス大学(University of Kansas)の人類学者デービッド・フレイヤー(David Frayer)教授と組んで研究に着手。4人は切断跡や研磨された表面、摩耗箇所があるワシ爪と足指を慎重に調査した上で、これらを材料に装身具が作られていた可能性があるとの見解を示した。

 研究チームは、ネアンデルタール人にとってその装身具が持つ象徴的価値や、首飾りか腕輪かなど装着方法については結論付けることができなかった。ただ、クラピナ遺跡が出土した爪の組み合わせで少なくとも3羽のワシが特定されており、ネアンデルタール人がワシの死骸を集めていたことは裏付けられたとしている。