■「改ざん」と「ビジョン」の違い

 色やトーン、コントラストの調整については基準の解釈が分かれるところで、論争の的になっている。例えば、人物の肌の色を暗くしたり明るくしたり調整することは写真の内容によって、審美的な効果を生むだけのこともあるし、人種差別的な意味合いを持つこともある。

 06年、レバノンのフリーランスのカメラマンが撮影し、ロイター通信(Reuters)が配信した写真が物議を醸した。レバノンの首都ベイルート(Beirut)をイスラエル軍が空爆した際の煙の色が、濃く調整されていたためだ。ロイター通信はこのカメラマンとの関係を絶った。

 13年の報道写真コンテストで大賞に輝いたスウェーデン出身のポール・ハンセン(Paul Hansen)氏の写真は、2年経った今もフォトジャーナリズムの世界で論争を引き起こしている。パレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)で行われた子供たちの葬儀を撮った1枚だったが、一部を明るくし、また他の一部を暗くする処理をしていたために、激しく非難された。だが世界報道写真財団は、写真の内容が改ざんされたわけではないとして、この作品を大賞に選んだ決定を貫いた。

「改ざんと、カメラマンのビジョンを混同してはいけない」と、タングステンを開発したeXo maKina社のロジャー・コジアン(Roger Cozien)氏はいう。「カメラマンが衝撃的な火山の爆発を目撃したとしよう。彼が撮った写真は、実際に目にした光景よりも退屈で壮観さに欠けるだろう。そこで彼は噴煙を暗く加工し、もっと印象的に見えるようにする。その行為について、彼は責任を問われるべきだろうか?彼がやったことは、自分が実際に見て感じたイメージに近づけただけだ。つまるところ、その場にいたのは彼であって、私たちではない」

 モノクロ写真も、フラッシュや望遠レンズを使って撮った写真も、現実を正確に反映したものではない。でもだからといって、嘘の写真だとみなされることはない。

ビジョンと改ざんを一緒にしてはいけない。これは長時間露光で撮った、ローマの上空を飛ぶカモメ。フォトジャーナリズムにおいてよく使われる手法で、全く問題ないが、目で見たものとは違う(2013年5月2日撮影)。(c)AFP/GABRIEL BOUYS