【3月6日 AFP】英国の科学者チームは5日、尿のなかにあるエネルギーを解放して発電するトイレを開発したと発表した。難民キャンプなどの遠隔地の照明への利用が期待されているという。

 西イングランド大学(University of the West of England)と国際支援NGOオックスファム(Oxfam)の共同研究チームが開発したこの発電トイレは、現在、同大の学生と職員らに使用してもらうことを目的に試作品がキャンパス内に設置されているという。

 安定した電力源となることが確認できれば、難民キャンプなどの施設で、電気と照明をコンスタントに提供できるようになるのではと研究チームは期待している。

 同NGOの水・公衆衛生部門を統括するアンディ・バスタブル(Andy Bastable)氏は、「電力源から遠く離れ、隔絶した地域に照明をもたらすことは常に大きな問題となっている」と指摘した上で、「この技術は非常に大きな前進だ。難民キャンプでの暮らしは楽ではない。夜間に暗い場所で暴行を受ける危険性もある。この発明の可能性は非常に大きい」と付け加えた。

 研究チームを率いるイオアニス・イエロプロス(Ioannis Ieropoulos)氏によると、装置1台を製作・設置して「永続的な」電力源を提供するためにかかる費用は、最終的に600ポンド(約11万円)前後になる可能性があるという。

 この装置の燃料電池には、尿に含まれる化学物質を分解するバクテリアが使われており、分解過程で放出されたエネルギー(電気)は、電池内のコンデンサーに蓄えられる。イエロプロス氏は「この微生物燃料電池(MFC)は、自身の成長と生命維持のために尿を餌とする生きた細菌を用いることで機能する」と説明した。

 また「MFCは実質的に、この生化学的エネルギーの一部を活用するシステムとなっている」と述べ、「ほぼこれ以上ないほど環境に優しい技術。化石燃料を使わなくてもよい上、豊富な供給が見込める廃棄物を有効に利用するからだ」と続けた。

 この「尿発電」プロジェクトは、米マイクロソフト(Microsoft)創業者ビル・ゲイツ(Bill Gates)氏夫妻の慈善団体「ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団(Bill and Melinda Gates Foundation)」から資金供与を受けている。(c)AFP