【3月6日 AFP】世界報道写真財団(World Press PhotoWPP)は4日夜、2015年の世界報道写真コンテストで、ベルギーの工業都市シャルルロワ(Charleroi)で撮影したとする組写真に授与した賞を撤回すると発表した。同作品は「やらせ」との批判を浴び、大きな議論を起こしていた。

 問題の作品は、同コンテストの「現代社会の問題」部門で受賞したジョバンニ・トロイロ(Giovanni Troilo)氏の組写真「ダーク・ハート・オブ・ヨーロッパ(The Dark Heart of Europe、欧州の闇)」。WPPは「誤解を招く情報」があったことを撤回の理由として挙げた。

 WPPは声明の中で、トロイロ氏に電話で確かめたところ写真のうち1枚がシャルルロワではなくブリュッセル(Brussels)で撮影されていたことが分かったと説明し、「虚偽の情報を提出してはならないという応募規定を順守していなかったので、賞を撤回しなければならない」と述べた。

「ダーク・ハート・オブ・ヨーロッパ」は欧州の都市の衰退を取り上げた組写真だったが、シャルルロワ市民が強く反発して物議を醸し、シャルルロワ市の市長は「現実をひどくゆがめている」と非難して賞の撤回を要求していた。

 この作品がソーシャルメディアなどで激しい非難を浴びる中、WPPは当初、トロイロ氏を擁護していた。自動車内で性交するカップルを捉えた写真は、カップルのうちの1人がトロイロ氏のいとこだったことから「やらせ」との批判を浴びたが、WPPは問題なしとしていた。

 WPPは当初、当該写真の撮影に問題があったことを疑わせる証拠はなかったとしていたが、4日夜、新情報を入手したとしてこの作品を失格処分とした。2015年の「現代社会の問題」部門は、2位と3位をそれぞれ1位と2位に繰り上げ、3位は該当作品なしになるという。(c)AFP