【3月5日 AFP】(一部更新)エチオピアで発掘された、歯の付いた顎の骨の一部は、現生人類が属する「ホモ(ヒト)属」の知られている限りで最古の化石だとする研究論文が、4日の米科学誌サイエンス(Science)に掲載された。

 人類の祖先は、これまで考えられていたより40万年早い約280万年前に、現在の同国アファール(Afar)州「Ledi-Geraru調査区域」が位置する湖、川、活火山などに近い開けた草原の環境で暮らしていたことを、今回の発見は示唆している。

 論文主執筆者で、米ネバダ大学(University of Nevada)のブライアン・ビルモア(Brian Villmoare)助教は、発見された化石は、「系統樹において、われわれのいる枝の一番最初の場所に位置する」と説明する。

「LD 350-1」として知られるこの顎の骨は、5本の歯が付いた下顎骨の左下側で、2013年に同調査区域の地表に近い細粒堆積層で発見された。

 この化石がヒト属の何の種のものかはまだ特定されていないが、細めの臼歯と歯列弓の形態は、より類人猿に近いアファール猿人(Australopithecus afarensis)にはみられない発達を遂げていたことを示している。アファール猿人は、この化石より数十万年早い時代に生息していたとされる。

 研究チームはこの化石について、ホモ・サピエンス (Homo sapiens) として知られる現生人類の直系祖先ではないが、現生人類に至った種の極めて早期の代表種として説明している。

 この化石は、同様の化石がほとんど発見されていない時代のものである上、直立歩行したが脳が小さく、より類人猿に近い猿人属の系統から、初期のヒト科動物がホモ・サピエンスの祖先として分岐した時期を解明する手掛かりとなる。そのため、研究者らは大いに興味をそそられている。

■「ルーシー」との関連性

 知られている限りで現代に最も近い時代のアファール猿人の化石「ルーシー(Lucy)」は、今回の発見地に近いエチオピアのハダール(Hadar)遺跡で発掘されたもので、約320万年前のものとされている。一方、知られている中で最古のヒト属化石はこれまで、約230万年~240万年前のものと考えられていた。

 今回の見つかった化石による時代の絞り込みでは「進化の過程が比較的速やかに進行したことが示唆されている」とビルモア氏は指摘する。

 米アリゾナ州立大学(Arizona State University)人類起源研究所(Institute of Human Origins)のウィリアム・キンベル(William Kimbel)所長は「新たに見つかった顎の骨は、猿人と初期ヒト属との間の進化の隙間を狭める助けになる」としながら、「これは、人類進化における最重要時期の過渡期化石の卓越した一例だ」と説明した。(c)AFP/Kerry SHERIDAN