【3月4日 AFP】仏ゲームソフト大手ユービーアイソフト(Ubisoft)は3日、「弱視」として知られる目の症状に対する処方薬として開発された、遊びと医療の世界を融合させたタブレット用ゲームを発表した。

 ユービーアイソフトは、カナダ・マギル大学(McGill University)の発明者らが特許を取得した治療技術を使用し、米健康技術ベンチャーのアンブリオテック(Amblyotech)と共同でこの新しいゲーム「ディグラッシュ(Dig Rush)」を開発した。

 同社の上級プロデューサー、マシュー・フェルランド(Mathieu Ferland)氏は「これは、ビデオゲームの技術が社会に提供することのできるプラスの影響を十分に実証するものだ」と述べた。

 弱視は、目から送信される情報と脳の認識が合わない症状で、患者数は世界人口の3%に及ぶと報告されている。アンブリオテックのジョセフ・コジャック(Joseph Koziak)社長によると、未治療の場合には失明する恐れもあるという。

 同社長によると、弱視は片方の目の有用性が他方に比べてはるかに低いことに伴って生じる。これにより脳が弱い方の目から送信される情報を抑制し、強い目に依存するよう反応させる状況がつくられるという。片方の目に依存することは、結果として奥行知覚の喪失を招く。

 ディグラッシュを効果的にプレーするには、両目を駆使しなければならない。背景は灰色で、そこに配置されるゲームキャラクターやアイテムなどは赤色か青色になっており、プレーヤーは、左右の目でどちらか一方の色をフィルターで見えなくする眼鏡をかける。

 このゲームをプレーするには、両目を使わなければならないとフェルランド氏は説明し、「この治療を通して、両方の目を使うように脳機能を回復させる」と述べた。

■処方薬としてのゲーム

 アンブリオテックは、ディグラッシュを医師による処方薬とするため、米当局から承認を得る意向を示している。医師らは、タブレットを治療器具として提供し、ゲーム上達のための手助けやキャリブレーション(こう正)および設定、上達状況の観察に携わることが考えられる。

 アンブリオテックのロバート・デリコット(Robert Derricotte)最高執行責任者(COO)によると、ディグラッシュの試験では、弱視患者の視力改善に約90パーセントの有効性が認められたという。

 弱視に対して現在行われている治療は、比較的効果が薄く、また弱い方の目を強制的に脳と連携させるために、患者の利き目をふさぐパッチを用いる必要があるが、それでも患者の3D(3次元)知覚は失われたままだとデリコットCOOは指摘した。

 デリコット氏は、「これは、既存のやり方を大きくかえるものだ。医師らは200年以上もの間、患者にパッチをあてる治療を続けてきた。これは弱視を治療するための斬新で最新の方法だ」とコメントしている。(c)AFP/Glenn CHAPMAN