【3月3日 AFP】ロシアの野党指導者ボリス・ネムツォフ(Boris Nemtsov)氏(55)が先月27日、首都モスクワ(Moscow)で何者かに殺害された事件で、発生当時一緒にいたネムツォフ氏の交際相手のウクライナ人女性が2日夜、帰国の途に就いたことが明らかになった。ウクライナ外務省報道官がツイッター(Twitter)で明らかにした。女性は、ロシア当局から出国を阻止されていると訴えていた。

 女性はモデルのアンナ・ドゥリツカヤ(Ganna Duritska)さん(23)。ネムツォフ氏はドゥリツカヤさんとクレムリン(Kremlin)から程近い場所にある橋を歩いて渡っていた際に射殺された。

 プーチン政権はマスコミや野党、反体制の実業家らを一貫して抑圧してきている。大統領はこの事件を「契約殺人」と断じ、挑発行為だと述べた。事件発生直後に、犯人逮捕に向け全力を尽くすと誓った。

 また、セルゲイ・ラブロフ(Sergei Lavrov)外相も2日、この「凶悪犯罪」を「徹底的に捜査」すると約束。事件関係の情報提供者には、300万ルーブル(約570万円)の報奨金を支払うと発表した。平均月給が6万ルーブル(約12万円)とされるモスクワでは巨額だ。

 最重要目撃者であるドゥリツカヤさんは、捜査当局に対し出せるだけの情報を提供したにもかかわらず、ドゥリツカヤさんの身の危険を理由に当局からロシアからの出国を阻止されていると訴えていた。

 ドゥリツカヤさんはロシア独立系民間テレビ局ドシチ(Dozhd)に対し、「3日間にわたり、警察車両で(本件の捜査を担当している)ロシア連邦捜査委員会(Investigative Committee)まで連れて行かれた」と明かし、「いつ解放されるのか、またなぜ私をここにとどめているかという説明もない」と抗議していた。

 ウクライナ首都キエフ(Kiev)在住のドゥリツカヤさんの母親のインナ(Inna Duritska)さんはAFPの取材に対し、ドゥリツカヤさんが事実上の自宅軟禁に置かれていることは、捜査当局がドゥリツカヤさんをロシアとウクライナ間で深まっている危機の「こま」にしようとしているのではないかという考えを示していた。

 さらに、ドゥリツカヤさんが「この殺人事件の容疑をかけられるような気がする、ウクライナと結び付けたいがためだ。彼らは何でも望みどおりにでっち上げることができる」と語っていた。(c)AFP/Anna MALPAS