【3月3日 AFP】訪米中のイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)首相は2日、首都ワシントン(Washington D.C.)で演説し、協議が続いているイランとの核合意がイスラエルという国家の存続そのものを脅かしかねないと警告した。その一方で、米国との二国間関係は依然として強固だと強調した。

 ネタニヤフ首相は親イスラエル系ロビー団体「アメリカ・イスラエル公共問題委員会(American Israel Public Affairs CommitteeAIPAC)」の年次会合に出席した活動家ら1万6000人を前に、「皆さんが今ここに集まっているのは、対米関係が悪化しているという報道は早まったものであるだけでなく、そもそも誤りなのだということを世界に伝えるためだ」と語った。

 同首相は翌3日、上下両院の合同会議で、イランの核開発を抑制するための合意締結に向けバラク・オバマ(Barack Obama)米大統領が続けている交渉努力の危険性について演説することになっている。

「演説でオバマ大統領やオバマ政権を侮辱するつもりは一切ない。私はどちらに対しても絶大の信頼を置いている」と断った上で、「明日の議会での私の演説の目的は、結ばれる恐れのあるイランとの合意について率直な意見を述べることにある。そのような合意はイスラエルの存続を脅かしかねない」「イスラエルと米国は、イランが核兵器を持つべきではないという点では一致している。意見が食い違っているのは、その開発を阻止するための最善の方法をめぐってだ」と述べた。

 ネタニヤフ首相の側近らによると、イランの核兵器開発阻止を目指した合意に向けて交渉を続けている国連安全保障理事会(UN Security Council)の常任理事国である米・露・中・英・仏にドイツを加えた6か国、いわゆる「P5+1」との協議内容について、イスラエルは「優れた情報」を入手しており、イランに核兵器を保持させないために不可欠だとイスラエルが考える徹底した保障措置を講じないまま、国際社会からの制裁を緩和する方向に協議が進んでいるという認識を示した。

 1日に同首相が米国に向かう飛行機の中で、匿名を条件に同行記者団の取材に応じたある側近は、「交渉中の合意について非常に多くのことを知っている」と明かし、「われわれの考えでは、それは悪い合意だ」と主張。さらに情報源については公表しないが、同首相が議会演説の中で詳細に触れると示唆した。

 ジョン・ケリー(John Kerry)米国務長官はこれを踏まえたとみられる発言の中で、イランの核開発の抑制を目指した合意の「特定の詳細」が今後数日のうちに公表される可能性があるという「報道を受けて危惧している」と述べた。

 イスラエル内外の反ネタニヤフ派は、同首相が自分の政策目標の達成ばかりを優先してイスラエルと米国との特別な関係を危険にさらしていると非難している。(c)AFP/Stephen WEIZMAN, Michael Mathes