【2月28日 AFP】オーストリア・ウィーン医科大学(Medical University of Vienna)のチームが、生体工学を用いて製作した人工義手「バイオニック・ハンド」(筋電義手)で思考制御型のものを開発した。25日、英医学専門誌ランセット(Lancet)に発表された論文によれば、生体移植とほぼ同様な機能を回復しつつ、拒否反応の危険がない。

 オーストリア人の患者3人は自動車事故または登山事故により、脊椎から上肢へとつながる神経のネットワーク「腕神経叢」(わんしんけいそう)に損傷を受けていたが、2011年4月~14年5月の間に革新的なロボット義手手術を受けた。

 手術前は、手が神経信号から不可逆的に切り離された状態だったが、手術後には3人とも「事故以来、初めてボールを拾う、水差しから水を注ぐ、鍵を使う、ナイフで食べ物を切る、両手でボタンをはずすといった日常のさまざまな動作を完全にこなすことができた」という。

 今回の研究の主成果は、神経信号によって、筋肉内の電気的刺激に反応するセンサーを付けた義手への刺激を可能にしたことだ。

 義手を開発したウィーン医科大学のオスカー・アスズマン(Oskar Aszmann)氏は、深刻な健康問題を引き起こす可能性がある強い免疫抑制剤の使用が必要な、ドナーからの手の移植よりも危険度が低いという。

 同氏はAFPの取材に対し「確かにバイオニックハンドでは感覚はない」点を認めながらも「機能の面だけから見れば、今日の義手は移植に劣らない」と述べ、失った手が片手の場合は「この義手による再建術の方に分があると考える。副作用がまったくないこと、しかも回復される手の機能は、移植の場合とほぼ同等か、優れてさえいるからだ」と語った。

 一方、両手を失った場合には「感覚喪失の問題に加え、一方の手でもう一方の義手をはめる必要があるため」依然、生体移植の領域といえるだろうと述べた。(c)AFP/ Christophe SCHMIDT