【2月23日 AFP】米軍パイロットはそれを「ゴーイング・ウィンチェスター(going Winchester、銃弾の撃ち尽くし) 」と呼ぶ。軍用機が搭載していた爆弾を投下し尽くしたという意味だ。先月クルド人部隊がトルコ国境に近いシリア北部の要衝アインアルアラブ(Ain al-Arab、クルド名:コバニ、Kobane)を奪還した戦いでは珍しくないことだったと、AFPの取材に応じた米軍のB1戦略爆撃機の乗員たちは振り返った。

 シリアとイラクの上空での6か月にわたる任務を終えて最近米国に帰還した乗員らは、コバニでクルド人と交戦していたイスラム過激派組織「イスラム国(Islamic StateIS)」の戦闘員らを標的に、米軍機がいかに休みなく空爆を実行したか詳しく語ってくれた。

 2003年の米軍のイラク進攻以来となった激しい空爆に支援されたクルド人部隊は先月コバニを制圧・奪還し、昨年10月にはコバニ掌握が目前とみられていたISに象徴的な打撃を与えた。B1の兵装システム士官トッド・サクサ(Todd Saksa)大尉(31)は「コバニに行った日は、まず確実に爆弾を投下することになる」と説明した。米テキサス(Texas)州のダイエス空軍基地(Dyess Air Force Base)からAFPの電話取材に応じたサクサ大尉はアフガニスタンで任務に就いた経験もあるが、今回は「投下した爆弾の数が極めて多かった」と語った。

 B1のパイロット、ブランドン・ミラー(Brandon Miller)少佐(38)は、これまで交戦地帯に5回配置されたがコバニの空爆ほど大量の爆弾を投下したことはなかったと言う。それ以前に爆弾倉が空になった経験はなかったというミラー少佐は、「私自身、3回ウィンチェスターになった」と語った。過去にアフガンで6か月ずつの任務に就いた時、少佐の飛行隊は15~20発の爆弾を投下することが多かったが、今回のシリアでは2000発余りを投下し、1700か所以上の標的に当たったという。

 B1の派生型であるB1Bランサー(Lancer)戦略爆撃機は1980年代の冷戦(Cold War)期に、超音速で旧ソ連の領空に低空侵入する目的で生産された。しかし米空軍関係者らによると、B1Bは米国主導の有志国連合によるコバニ空爆では「頼りになる働き者」となり、ISの戦闘員や車両を葬り去った火力の大半はB1Bによるものだった。

 運用当事者から「ボーン(Bone)」の別名で呼ばれているB1は、戦闘機と違って大きな燃料タンクのおかげで攻撃目標の上空に長時間とどまることができ、兵装搭載量も非常に大きい。