【2月20日 AFP】「マンチ」と呼ばれる大麻の食欲増進作用は、通常は食欲を抑える働きをする脳細胞が原因になっている可能性があるとする研究論文が、18日の英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された。

 米エール大学(Yale University)のタマス・ホルバート(Tamas Horvath)氏が率いた研究チームは、遺伝子組み換えマウスを用いて、大麻に含まれる活性成分によって、マンチを引き起こすのに利用される視床下部の神経回路を特定した。

 ホルバート氏は「大麻によってもたらされる空腹感を引き起こしているのは何か、通常は摂食行動を抑止するメカニズムがどのようにして摂食を駆り立てる原因になっているのかを、今回の研究で知ることができた」と語る。

 大麻に含まれる活性化合物、カンナビノイドは、視床下部のプロオピオメラノコルチン(POMC)ニューロンと呼ばれる神経細胞群に限定的に作用することを同氏の研究チームは発見した。

 POMC細胞は、いつ満腹に達するかを告げる信号を発信するため、過食を防ぐ大きな働きがあるとこれまで考えられていた。

 だが研究チームが驚いたことに、POMC細胞の作用は、カンナビノイドの影響を受けると完全に反転した。

 実質的に「私は満腹」と告げる化学信号を発信するのではなく、食欲を増進する作用があることが知られている神経伝達物質のエンドルフィンを分泌したのだ。

 ホルバート氏は、声明で「車のブレーキではなく、アクセルを踏み込むようなものだ」と例えている。

「摂食の抑止に関与すると考えられていた神経細胞が突如として活性化され、空腹感をあおることを発見して、われわれは驚いた。満腹の時ですらみられるこの作用は、摂食行動をつかさどる脳の中央処理系を欺いている」

 またカンナビノイドは、脳内の食欲に関係する他の部位に影響を及ぼし、嗅覚や味覚を高める作用があることが判明している。

 今回の結果を人間で再現できれば、治療中に食欲が失われるがん患者など、摂食障害を抱える人々の治療の一助になるかもしれない。(c)AFP