【2月19日 AFP】ウクライナ政府軍と親ロシア派武装勢力との間で激戦が続いていた同国東部の鉄道交通の要衝デバルツェボ(Debaltseve)が18日、親露派によって制圧された。ウクライナのペトロ・ポロシェンコ(Petro Poroshenko)大統領は、破たんした停戦合意の施行のための欧州連合(EU)による平和維持部隊派遣を要請した。

 親露派は16日、自らの拠点とするドネツク(Donetsk)とルガンスク(Lugansk)を鉄道でつなぐ町であるデバルツェボの奪取を目指し、停戦を無視する形で攻勢を開始。同町からは疲労困ぱいした約2500人の政府軍兵士が18日までに撤退し、親露派戦闘部隊の報道官は町を「完全に制圧」したと述べた。

 デバルツェボ陥落は、ウクライナ軍にとって大きな打撃となり、ウクライナ、ロシア、ドイツ、フランスの4か国首脳によって最後の望みとして提案された和平案を窮地に追い込んでいる。

 同大統領は、配備されていた兵士の80%が撤収したことを明らかにし、「計画された組織的撤兵」だと説明しているが、デバルツェボの隣町アルテーミウシク(Artemivsk)では、汚れた軍服でやつれた様子の兵士たちが、戦車など数十台の車両や徒歩で到着しており、大統領の説明とは矛盾している。部隊名や氏名を伏せてAFPの取材に応じた兵士は、「撤退の命令など聞いていない。重装甲車が撤退し始めたのでわかった」と語った。

 また大統領は、兵士6人が死亡、100人以上が負傷したと述べた。公式な死者数は発表されてないが、地元の死体安置所には少なくとも13人の兵士の遺体が搬送された。デバルツェボにはジャーナリストや欧州安保協力機構(Organization for Security and Cooperation in EuropeOSCE)の監視員が入ることができないため、町内の状況や、推定5000人の住民の状況を確認することは不可能となっている。

 デバルツェボの陥落は、欧州の仲介の下で先週合意され、国連安全保障理事会(UN Security Council)によって17日に承認された停戦協定に対する重大な打撃となった。

 ウクライナと欧米諸国は、ウクライナ東部での戦闘激化の責任はロシアにあると主張している。昨年3月にウクライナ領だったクリミア(Crimea)半島を編入したロシアは、ウクライナ東部の分離独立運動を支援するために同国領内に兵士や重火器を送り込んでいると非難されている。

 北大西洋条約機構(NATO)は、ロシアに「ウクライナ東部からすべての部隊を撤退させ、分離派への支援を停止し、停戦合意を順守する」よう要求。米政府は「ロシア部隊と協調して行動する分離派勢力による停戦違反を強く非難する」との声明を発表した。(c)AFP/Dmytro GORSHKOV and Oleksandr STASHEVSKY in Artemivsk