【2月11日 AFP】南米コスタリカに生息するサンゴヘビは、かまれるとけいれん発作を起こす毒を持つが、この毒の作用機構に関する謎を解明したとする研究論文が、9日の査読学術誌の米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)に掲載された。統合失調症、てんかん、慢性の痛みなどに関する研究を進展させる可能性のある成果だという。

 米ジョンズホプキンス大学医学部(Johns Hopkins University School of Medicine)などの国際研究チームが発表した論文によると、サンゴヘビの毒には、ミクルロトシキン(MmTX)と呼ばれる一組のタンパク質が含まれている。「ガンマアミノ酪酸A(GABAA)受容体」として知られる、脳や脊髄にある神経細胞の細孔(ポア)にこのMmTXが結合することで、致命的となる可能性のある発作が引き起こされるという。

 同大のフランク・ボスマンズ(Frank Bosmans)助教(生理学・神経科学)は「われわれが発見したのは、知られている限りで最初の動物性毒素で、GABAA受容体を標的とする、群を抜いて強力な作用を持つ化合物だ」と語る。

「ひとたび受容体に結合すれば、もう二度と離れない」

 GABAA受容体に対してこれまで知られているどの化合物より強い結合力を持つMmTXは、GABAA受容体タンパク質の特異部位に結合する。

 結合が起きた場合、受容体のポアは恒久的に開いた状態となり、神経細胞は初期状態に戻ることができなくなる。

 研究チームは今回の成果が、GABAA受容体の異常が原因で起こるてんかん、統合失調症、慢性の痛みなどの研究が進展する一助になることを期待している。

 ボスマンズ助教は「ジアゼパムやアルプラゾラムなどの抗不安薬もまた、GABAA受容体に結合するが、はるかにゆるく結合するため、けいれんではなく弛緩(しかん)を引き起こす」と話した。

 今回の研究は、フランス国立科学研究センター(National Centre for Scientific ResearchCNRS)の資金供与を受けた。(c)AFP