【2月10日 AFP】英金融大手HSBCが富裕層顧客の巨額の脱税をほう助していたことを示す機密文書がインターネット上で公開されたことを受けて9日、世界中に波紋が広がり、超富裕層の金融取引に注目が集まっている。

 通称「スイスリークス(SwissLeaks)事件」と呼ばれるこのスキャンダルで暴露された極秘ファイルには、著名人や武器商人とみられる人物、政治家などの名前も含まれている。ただリストに名前が載っているからといって必ずしも不正行為に関与したとは限らない。

 公開された文書によると、HSBCのスイス部門が200か国以上の顧客の脱税をほう助したとされる。それらの顧客の口座残高の総額は1190億ドル(約14兆円)に上るという。

 欧州最大の銀行であるHSBCでIT担当だったエルベ・ファルチアニ(Herve Falciani)元社員が2007年に多数のファイルを盗み出し、フランス当局に提出していた。このファイルが一般公開されたのは今回が初めて。

 国際調査報道ジャーナリスト連合(International Consortium of Investigative JournalistsICIJ)はこれらのファイルを仏紙ルモンド(Le Monde)経由で入手し、世界中の45社を超えるメディアに提供した。

 ICIJによると、HSBCが国際的な犯罪者らや実業家、政治家、著名人らにスイス口座を開設させていたことがこの文書から分かるとしている。

 節税は合法だが、脱税は違法だ。今回の暴露により、富裕層や多国籍企業による巧妙な脱税の摘発を求める声が強まった。

 ICIJは、「HSBCは、アフリカで迫撃砲弾を少年兵らに運ぶ武器商人や第三世界の独裁者の金庫番、『紛争ダイヤモンド』の密売人、その他の国際犯罪者らと取り引きを行って利益を得ていた」と伝えた。