【2月7日 AFP】樹木を主食として家屋の木材を食い荒らし、害虫とみなされているシロアリが、半乾燥地域の砂漠化を食い止め、気候変動の影響を和らげているという論文が5日、米科学誌サイエンス(Science)に掲載された。

 論文によると、アフリカ、中南米、アジアの草原やサバンナ、乾燥地帯にみられるシロアリの巣(アリ塚)は水分と栄養分を蓄え、シロアリが作った無数のトンネルを通じて水分が地中に流れ込みやすい構造になっている。このため、砂漠化の影響を受けやすい場所でも植生に適した環境をアリ塚が提供しているという。

 論文の主執筆者、米プリンストン大学(Princeton University)のコリーナ・タルニータ(Corina Tarnita)氏は、同じ降水量でも、アリ塚は土壌に水分を浸透させやすいため、アリ塚の周囲ではより多くの雨が降ったかのように植物が生育すると説明。砂漠化で植物が消滅した場合でも、アリ塚周辺の植生は回復しやすいという。

 プレーリードッグやホリネズミなどの動物もアリ塚に似た巣をつくるが、こうした生物は生態系において大きな役割を果たしている可能性があると、論文の共著者で、生態学と進化生物学が専門のロバート・プリングル(Robert Pringle)准教授は言う。シロアリを「生態系の要」と考えるのが好きだというプリングル氏によれば、シロアリは生態系の生産性を高め、さらにその安定性と復元力の向上にも貢献しているという。(c)AFP