【2月10日 AFP】家内安全を祈願する厄払いの儀式から、銃弾から身を守るためのお守りまで、タイの文化は迷信に満ちている。そうした迷信への執着が、国が発展しない原因だという主張があるほどだ。

 超常現象を毎週取り上げる人気テレビ番組「幽霊に挑む人々」では、母親の遺体のそばで3日間を過ごした2歳の少女が出演し、コメンテーターの一人から質問を浴びた。「誰があなたのミルクを用意したの?」「誰があなたと遊んでくれたの?」「誰がドアを開けてくれたの?」。その質問に対して「ママ」と答えた少女も質問者たちも、つらかった日々に彼女を養い続けたのは母親の幽霊だと純粋に信じていた。

 タイでは、このような番組は単なる娯楽を超えた存在だ。「国中の人が来世の存在を信じている」というのは、タイで最も有名な幽霊の専門家であるカポル(Kapol)さんだ。「西洋人は悪魔の存在を信じているのかもしれないが、東南アジアの国々で人々が信じているのは幽霊だ。この種の信心は、人々は悪行を慎む効果をもたらしている。Aという人物が『もしBという人物を殺したら、Bが幽霊となって戻ってきて、自分を苦しめるかもしれない』と考える、といった具合に」と説明する。

 精霊信仰(アニミズム)や民間信仰が仏教と深く結びついているタイでは、いたるところに精神世界がある。ほとんどの建築物では、縁起が良いとされる場所に「神棚」を祭り、幽霊たちが悪霊へと変貌しないよう鎮める供え物がささげられる。

 悪名高いタイの政争もまた超常現象に頼っている。対立陣営は互いに黒魔術による呪いを公然とかけ合う。抗議デモの参加者たちも、銃弾や危害から逃れる力を持つとされているお守りを身にまとう。