【2月3日 AFP】渡り鳥のV字型飛行では、先頭が最も過酷なポジションとなっているが、鳥たちは交代で先頭に立つことで互いに補い合い、体力を消耗し尽くす者が出ないようにしているとの研究論文が2日、査読学術誌の米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)に掲載された。

 論文を発表した英オックスフォード大学(Oxford University)などの国際研究チームは、今回の発見を「鳥の『交代で行う』相互協力行動に関する世界初の有力証拠」としている。

 今回の研究は、オーストリア・ザルツブルク(Salzburg)からイタリア・オルベテッロ(Orbetello)に季節移動するホオアカトキ(学名:Geronticus eremita)14羽の調査に基づくものだ。

 14羽にはそれぞれデータ記録機器を装着、V字型飛行編隊の中で個々の鳥がどのように行動するかを追跡調査した。

 その結果「鳥たちが群れの中で頻繁に位置を変えている」ことを研究チームは発見した。

「鳥たちは全般的に、飛行時間の平均32%を他の鳥の羽ばたきで発生する上昇気流に乗って飛行することで恩恵を受けていた。また編隊の先頭に立つ時間については全員で釣り合いを取っていた」と論文は説明する。

 研究チームは、この高いレベルの連携について、生存に不可欠なものとして進化したと考えている。

 一部の研究によると、若い鳥の3分の1以上は、最初の渡り飛行中に極度の疲労が原因で死に至る。渡り行動は危険を伴うため、編隊を組んで飛行し、規則正しく位置を変えることを習得した鳥たちは、他の鳥の上昇気流の中を少しの間「ただ乗り」飛行してエネルギーを節約しているとされる。

 論文主執筆者で、オックスフォード大動物学部のベルンハルト・フォルクル(Bernhard Voelkl)氏は「相互協力行動の根幹は非常にシンプルである可能性があることを、今回の研究結果は示している。すなわち、トキは2羽一組で飛行する場合が多く、1羽が先頭に立ち、『編隊僚機』のもう1羽は先頭が作る上昇気流の中を追随して飛行することで恩恵を受ける」と語る。

「このように2羽一組で飛行する場合、個々の鳥は、エネルギーを奪われる先頭位置とエネルギーを節約できる追随位置とで過ごす時間配分を正確に釣り合わせつつ、各位置を交代で飛行していることが、今回の研究で判明した」

 3羽以上の集団で飛行する場合でも、この2羽での協力理念は群れ全体に浸透しており、後ろで滑空してばかりで決して先頭になろうとしないような「ただ乗り」常習者は全くみられなかった。

「実際、驚くべきことに、群れの中で何らかのずるい行為が行われたことを示す証拠は何も見つからなかった」と同氏は付け加えた。(c)AFP