【1月30日 AFP】インターネットサービス大手の米ヤフー(Yahoo)は今月、保有している中国電子商取引大手アリババ(阿里巴巴、Alibaba)の株式約15%について、切り離し新設する投資会社に移管するスピンオフ計画を発表した──。この計画を通じてヤフーは課税を回避することができるが、将来的にはより厳しい立場に立たされたとの見方も浮上している。

 ヤフーは、新設された投資会社「スピンコ(SpinCo)」に、保有する約400億ドル(約4兆7000億円)相当のアリババ株を移管し、ヤフーの株主にスピンコの株式を配る。事業再編に取り組むマリッサ・メイヤー(Marissa Mayer)最高経営責任者(CEO)は会見で「株主への還元率を最大化し」、多大な税負担を回避できると語った。

 この動きは投資家らに好感され、同日の時間外取引でヤフー株は6.69%上昇し、51.20ドルをつけた。しかし、検索エンジンとして謳歌していた影響力が薄れる中、アリババ株の分離によって、メイヤーCEOに課せられた事業立て直しへのプレッシャーはいっそう強まったとの見方もある。

 スピンオフ後のヤフーには中核事業が残るが、アナリストらは、今後の明確な道筋も戦略も示されていないと指摘する。一部では、アリババ株分離後に残るヤフーの中核事業自体には、ほとんど価値がないという厳しい見方もある。

■コンテンツ好調も、検索技術の不在は決定的

 IT業界専門のマーケティング調査会社、エンドポイント・テクノロジーズ・アソシエーツ(Endpoint Technologies Associates)のロジャー・ケイ(Roger Kay)氏はAFPに対し、スピンオフによってヤフーはアリババ株の「価値を引き出す」ことはできるが、ヤフー自身の将来に関する問いに答えることはできていないと指摘し「ヤフーには明確なブランド・アイデンティティーがあり、多くの価値ある資産もある。しかしビジネスモデルが古く、大きな成長を生み出すよう変革する明確な方策も持ち合わせていない」と述べた。

 ヤフーのメイヤーCEOは、競合するグーグル(Google)の創業期に入社して以来、生え抜きとして様々な部門で成功を収め、米IT業界そして米財界で最も卓越した女性の一人として頭角を現していた2012年7月に、ヤフーに乗り込んだ。

 メイヤー氏の「スター性」はヤフーに新たな活気をもたらし、検索エンジン市場を独走していた栄光の時代の再来を期待させた。ヤフー・ニュースに、米3大放送局の全てで番組司会者を務めた経歴がある有名キャスターのケイティー・クーリック(Katie Couric)氏を起用したり、コンサートのインターネット生中継といった新サービスを打ち出したりと、新機軸も積極的に打ち出してきた。

 しかし、エンドポイントのケイ氏は、ヤフーが検索エンジンとしての役割を取り戻そうとしても、将来性はないという。「ヤフーにとって検索部門は終わっている。グーグルには検索技術があるが、ヤフーにはない」。ライブ・コンサートや動画、ニュースなどのコンテンツ部門は面白く、ユーザーの間で閲覧先として浸透しているが「ビジネスモデルを根本的に変えるほどではない」という評価だ。