【1月30日 AFP】イスラム教スンニ派(Sunni)の過激派組織「イスラム国(Islamic StateIS)」が人質に取り、殺害すると脅迫している日本人ジャーナリストの後藤健二(Kenji Goto)さんの妻が29日、事件発覚後初めて声明を出した。後藤さんの命を救うことにつながり得る人質交換の期限の数時間前のことだった。

 イスラム国は、後藤さんと引き換えにヨルダンに収監されているサジダ・リシャウィ(Sajida al-Rishawi)死刑囚を釈放しなければ、ヨルダン軍パイロットのモアズ・カサスベ(Maaz al-Kassasbeh)さんを殺害すると脅迫している。トルコとシリア国境でのこの人質交換の期限は、この日の日没とされていた。

 フリージャーナリスト支援団体「ローリー・ペック・トラスト(Rory Peck Trust)」のウェブサイト上で公開された声明には、「リンコ(Rinko)」とのみ署名されている。この中で後藤さんの妻は、日本とヨルダン両政府に対し、夫とヨルダン人パイロットの命を救うよう懇願している。

「誘拐犯らはこれまでの20時間に、最後となるとみられる最新の要求を送ってきました」と後藤さんの妻は述べた。「健二と交換できるよう、29日の木曜の日没までにサジダがトルコ国境に来ていなければ、ヨルダン人パイロットは直ちに処刑されます」としている。

 イスラム国は直近のメッセージの中で、戦争ジャーナリストとして知られる後藤さんを解放する用意があるとしていた。

 しかしヨルダン政府は、昨年12月24日にF16戦闘機でシリア北部を飛行中に墜落したパイロットのモアズ・カサスベさんの解放を要求。イスラム国が提示した期限が迫る中、ヨルダン側はカサスベさんが生存している証拠の提出を引き続き求めているとしているのに対し、イスラム国はこれまでのところこれを拒否している。

 後藤さんの妻は、夫妻の間に幼い娘が2人いると明かし、「健二が日本を離れた時、次女はまだ生後3週間でした。私は、2歳の長女が父親に再会できるよう願っています。2人には父親を知りながら成長してほしいのです」

「夫は善良で正直な人です。シリアに向かったのは、同国で苦しむ人々の窮状を伝えるためでした」「夫にとって、これが最後のチャンスになるのではと危惧しています。確実に夫を解放させ(カサスベさんの)命を救うには、もう数時間しか残されていません」

「ヨルダンと日本の両政府が、2人の運命は両政府にかかっているのだとご理解下さるよう切に願います」(c)AFP