■「交渉内容拡大の機会」

 アンマンにあるアル・クッズ政治学研究センター(Al-Quds Centre for Political Studies)のオレイブ・レンタウィ(Oraib Rentawi)所長は、自国のパイロットが拘束された状態で後藤さんと引き換えにリシャウィ死刑囚を釈放することをヨルダン政府に期待するのは非合理的だと指摘する。だが、両国は両方の人質の解放を要求するという大胆な試みに打って出る可能性もあるという。

 レンタウィ氏はアンマンでAFPの取材に応じ、「ヨルダン政府にとっては、イスラム国との交渉内容を拡大し、日本人の人質とヨルダン人パイロットの両方を解放する約束を取り付ける機会ができた」と語った。

 読売新聞(Yomiuri Shimbun)は、ヨルダン政府が、後藤さんとカサスベさん2人の解放と引き換えにヨルダンが収監している2人の受刑者を釈放するという提案をする可能性もあるが、イスラム国がこれに合わせて要求を増やしてくる恐れもあると伝えた。

 日本政府側の動きからは、2対2の人質交換に向けた下地作りを進めている可能性もうかがえる。アンマンの対策本部を率いる中山泰秀(Yasuhide Nakayama)外務副大臣は記者団に対し「パイロットの救出もわれわれのテーマだ。2人が無事に戻れる日が来るよう、ヨルダンと日本の両国で力を合わせて取り組む」と語った。

 だが中山外務副大臣のこの発言の数時間後には、米国のジョン・ケリー(John Kerry)国務長官が日本の岸田文雄(Fumio Kishida)外相と電話会談を行っている。

 東京にあるテンプル大学(Temple University)ジャパンキャンパス現代アジア研究所のロバート・デュジャリック(Robert Dujarric)研究所長は、日本にとって望ましい行動をヨルダン政府に取らせる自由裁量を日本政府が持っているわけではないことを認識することは重要だと述べるとともに、米国の意向も関係してくると指摘した。(c)AFP/Hiroshi HIYAMA